2025年7月 |
16日配信 Z世代酒匠がおすすめする「今週の注目の一本」はじゃがいも焼酎ぽてちゅう・沖縄北大東/久米仙酒造(沖縄)です。
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沖縄最東端に位置する小さな島、北大東島。
規格外となった特産品のじゃがいもを活かすために作られたのは、2種類のじゃがいも焼酎でした。
花のような柔らかな香りとさらりとした飲み口の「ぽてちゅう」。スモーキーで厚みある味わいの「沖縄北大東」。
飲み比べでの提供は島旅気分を盛り上げてくれることでしょう。
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商品紹介
・商品名:じゃがいも焼酎ぽてちゅう・沖縄北大東
・酒蔵名:久米仙酒造株式会社(沖縄県那覇市)
・原料:じゃがいも(北大東島産)、米麹(タイ産米)
・参考価格(税込):1,408円(900ml)
・その他:北大東島産のニシユタカというじゃがいもを原料に使用しています。「沖縄北大東」は「ぽてちゅう」の樽仕込みバージョンです。
北大東島について
北大東島は、沖縄本島から東に約360km離れた場所に位置する、人口約600人の小さな島です。周囲を断崖絶壁に囲まれたこの島は、「うふあがり島(はるか東にある島)」として古くから琉球王国の人々の間で知られていました。明治36年(1903年)に開拓が始まり、燐鉱の採掘やサトウキビの栽培が行われてきたそうです。
北大東島では、台風や干ばつの被害に左右されやすいサトウキビ以外の収入を確保することを目的として、サトウキビの輪作(同一耕地で異なる作物を育てること)にじゃがいもが組み込まれています。10~12月にかけて植え付けがされ、2~3月に収穫を迎えます。北大東島の特産品であるじゃがいもを使って作られたのが、今回ご紹介するじゃがいも焼酎です。
香りと味わいの特徴
ぽてちゅう
外観は無色透明。レンゲやすみれの花のような柔らかな香りがあります。口に含むと、米麹由来のふくよかな旨味が広がり、その奥にじゃがいもならではのでんぷん質を想起する味わいが感じられます。続いて、なめらかで角のない苦味が表れますが余韻は短く、さらりとした印象です。
沖縄北大東
外観はやや淡い黄色。ぽてちゅうよりも香りが濃く、ウイスキーのような木樽由来の渋みを思わせる香りに、わずかに黒糖のような甘い香りも混ざります。
口に含んだ時の印象も、黒糖や黒蜜、ざらめのような濃密で少し焦がした甘味を思わせます。アルコール由来の厚みのある苦味が余韻に残り、ボディ感のある味わいです。
おすすめの楽しみ方
<酒器>
琉球王国時代から続く泡盛文化がある沖縄では、カラカラやちぶぐゎー、嘉瓶(ゆしびん)、抱瓶(だちびん)など、泡盛用の伝統的な酒器が多くあります。今回ご紹介するのは泡盛ではなく本格焼酎ですが、こういった古来から大切に受け継がれた酒器が楽しめる場合は、是非試していただきたいです。
<合わせる料理>
すっきりしたタイプの「ぽてちゅう」は天ぷらや冷奴、刺身などの素材の味を活かしたシンプルな調理法の料理がおすすめです。
スモーキーなタイプの「北大東島」は熟成チーズやドライフルーツ、いぶりがっこなど凝縮感のある素材と高相性でしょう。また、濃密な甘味を思わせる要素があるので、ビターチョコレートのようなコクのある苦味を持った食品もおすすめです。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
9日配信 【今週のコラム】アメリカの日本酒販売状況@現地系・日系小売店
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先日、アメリカのサンフランシスコとロサンゼルスに行く機会があり、現地の小売店で日本酒の取り扱い状況を視察しました。
アメリカの日本酒販売状況のレポートの第三回として、日本酒専門店を取り上げた第一・第二回とは変わって、現地のスーパーマーケットやワインショップを取り上げます。尚、本レポートはトランプ関税が発動する以前のものになります。
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サンフランシスコで初めに訪れたのは「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」。オーガニック食品を中心に販売する、高級路線の現地系大手スーパーマーケットです。
日本酒として統一されたカテゴリの棚はなく、ワインの品揃えの延長に、梅酒やその他のリキュールと一緒に約10銘柄が常温で陳列されていました。
この中で気になったのは塩川酒造(新潟)のCOWBOY YAMAHAI。実は第一回・第二回のレポートで取り上げたUmami MartとTrue Sakeのどちらでも取り扱われていました。今回、白鶴酒造や米国宝酒造など、大手酒蔵の商品に混じって現地系スーパーマーケットでも販売されていたのを目にして、アメリカ市場へしっかりと浸透していることが伺われました。
それもそのはず、COWBOY YAMAHAIはアメリカで人気のステーキに合う日本酒として開発され、第二回で取り上げたサンフランシスコの日本酒専門店True Sakeのオーナーが名付け親になったそうです。こってりした肉料理に合うように設計された酒質だけでなく、消費者が一目見てペアリングが理解できるよう牛のシルエットが大きく描かれたボトルデザインにも、現地の市場ニーズに合わせて商品開発がされたということがよく表れているように感じました。
COWBOY YAMAHAIのようにアメリカ市場にうまく入り込んだ商品がある一方で、日本酒全体で見ると、ワインに比べて割かれている棚のスペースはごく僅か。他の現地系スーパーマーケット「Trader Joe’s(トレーダー・ジョーズ)」では一本も日本酒の取り扱いがなかったこともあり、アメリカの現地系スーパーマーケットでは日本酒はまだまだ馴染みが薄い飲料であることを痛感しました。
次に訪れたのはロサンゼルスの日系スーパーマーケット「NIJIYA MARKET(ニジヤ・マーケット)」です。
日本の食品や雑貨を専門的に扱っているお店だけあり、ざっと数えただけでも販売されている銘柄は80以上。日本食好きや現地の駐在員がよく利用するスーパーマーケットということで、現地系スーパーマーケットとは違って様々な酒質、価格帯の日本酒の需要がある印象でした。
最後に訪れたのはロサンゼルスのワインショップ「FLASK&FIELD(フラスク・アンド・フィールド)」です。
ワインや雑貨がメインの商品ですが、スピリッツが並べられた常温の棚の一角で約10銘柄が販売されていました。各銘柄には、手書きのテイスティングノートのタグが付けられており、香りや味わいの特徴の他にペアリングのおすすめが記載されています。数は少ないものの1本1本を丁寧に売ろうとしている姿勢が感じられた一方で、蒸留酒と同じ常温の棚の一角で販売されることにより、日本酒をよく知らない消費者には蒸留酒の一種として捉えられてしまうのではないかといった懸念も抱きました。
現地系スーパーマーケット、日系スーパーマーケット、そしてワインショップと三者三様の取り扱い状況を見ることができたとともに、消費者が「日本酒を買おう」と思って足を運ぶ日本酒専門店以外の小売店でも日本酒の販売が広がることが、市場を広げる鍵になるのではないかと感じました。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
2日配信 【今週オススメの1本】甘さと酸味が高バランスな今夏オススメ夏酒!「琥泉 純米吟醸夏の原酒・一火」
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梅雨が明け、本格的な夏を迎えるにあたって、より夏酒を飲みたくなるのでは無いでしょうか?
そこで今回は個人的に感動した夏酒として泉酒造(兵庫県)の「琥泉 純米吟醸夏の原酒・一火」をご紹介します。
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【特徴】
1:醸造
兵庫県産米と夏酒系の自社酵母を使い、生酒の状態で一回火入れをしております。火入れすることで吟醸酵母がしっかりと生かされ、華やかな香りと爽やかな味わいが表現されています。
2:香味
香りは青リンゴを彷彿させるフレッシュな甘さがあり、口あたりも同調するかのように軽快。
口に含んでみれば優しく広がる甘味と旨味が感じられ、後味は爽快にサラッと流れる、「これぞ夏酒!」というような香味です。
【オススメポイント】
こちらはズバリ『飲み応え』にあります。
原酒ということもありアルコール度数は16度。そのためアレンジを加えても本質にあるコクある旨味と爽やかな酸味を損なわずに楽しむことができます。
飲み方として爽やかな香味感を楽しめる冷酒も良しですが、ロック氷をグラスに1つ入れてみたり、トニックウォーターや果実酒などをブレンドしてみれば、また更なる美味しさが体感できます。その点も踏まえて何杯でも楽しめる『飲み応え』がオススメポイントです。
【ペアリング】
私自身、白身魚の刺身や夏野菜の煮浸しなど食材の良さを活かしたものや、軽快な味わいが特徴的な香味野菜の冷奴がペアリングとしてオススメ!
折角なので、夏時期の旬食材を使ったペアリンググルメをいくつかご提案します。
・スナップえんどうとアスパラガスのタルタルサラダ
焼きで調理した野菜の甘味と食感にまろやかなタルタルソースをトッピングした一品。ソースにレモン汁を足せば夏酒と合わせてよりさっぱり楽しむことができるでしょう。
・豚とナスのピリ辛中華炒め
香ばしく炒めた食材に豆板醤の辛さを効かせた一品。
濃厚な料理と旨味×爽快な香味感は相性◎
・ゴーヤのナムル
おつまみ系として、ごま油やニンニクの香り高い風味とゴーヤの爽やかな苦味が合わさったナムルもオススメです。
お酒と料理、両方の良さが活きる相乗効果が期待できます。
【まとめ】
今回はオススメな夏酒「琥泉 純米吟醸夏の原酒・一火」をご紹介させていただきました。
ふわっとフルーティーな香りが広がり、旨味と酸味のバランスが絶妙ながら後味はスッと流れる、飲み応え抜群な夏酒でした。
冷酒はもちろんのこと「アレンジ」による様々な楽しみ方や夏野菜を使った料理とのペアリング度の高さを、ぜひ消費者に提供してみてください。
【日本酒情報】
・日本酒名:琥泉 純米吟醸夏の原酒・一火
・種類:純米吟醸酒
・酒蔵:泉酒造株式会社(兵庫県)
・アルコール度:16度
・精米歩合:60%
・日本酒度:-1~+1
・価格:税込1,760円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
2025年6月 |
25日配信 日本酒の新指標「モダン系」「クラシック系」について
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近年の日本酒業界で新しい分類として登場した「クラシック」と「モダン」。
提供者は既に把握済みかもしれませんが今回は改めてこの業界用語を聞いたことはあるけど、明確な分類の違いが分からないという消費者へ丁寧に説明できるように、細分化しながら解説していきます。
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【クラシック・モダンに分類される日本酒の特徴】
まずはクラシック・モダンに分類される日本酒について解説します。
●クラシック(語源:昔ながら、古典的)
・醸造方法:伝統的製法(生酛・山廃造り)が多い傾向。
・香味:香りは控えめで、キレの鋭さが特徴的な「淡麗辛口」や芯のある旨味があり、燗酒や常温でも美味しく楽しめる「濃醇旨口」のお酒。
・種類:本醸造系・純米酒系
●モダン(語源:現代的、近代的)
・醸造方法:伝統的製法を踏襲しつつ、現代的製法(速醸酛など)を用いられてる。
・香味:フルーティーで華やかな香りが感じられ、雑味は少なくフレッシュな味わい。低アルコールやスパークリングタイプなどもあてはまる。
・種類:吟醸系・大吟醸系
大まかには上記のように分類されますが、クラシックとモダンのなかでも「ライト・リッチ」と細分化されることもあります。
・クラシックライト:香りは控えめでキレのある淡麗辛口系
・クラシックリッチ:熟成感があり、お酒の色合いはやや琥珀色。どっしりとした旨味や酸感がある濃醇旨口系。
・モダンライト:スッキリとしたテクスチャーがあり、瑞々しい美味しさがある。
・モダンリッチ:華やかさが際立ち、ジューシーな美味しさが感じられる。
【各タイプに適した飲み方やオススメなペアリンググルメ】
続いては各タイプごとで美味しく楽しめる飲み方やペアリングについて紹介していきます。
●クラシック
・飲み方:冷酒~燗酒まで温度変化を幅広く楽しむことができる。種類にもよりますが、旨味のふくよかさを堪能したいときは燗酒がオススメ。
・ペアリングメニュー:主に和食や中華が合う傾向。お刺身やサバの味噌煮、おでんなど。
●モダン
飲み方:主に冷酒がオススメだが、果実感やジューシーさが際立つ日本酒の場合、ロックやソーダ割りでも楽しむことができる。
ペアリングメニュー主に洋食と合う傾向。タコのカルパッチョやグラタン、フルーツのカプレーゼにステーキなど。
【クラシック系が向いている人・モダン系が向いている人】
最後は2つのタイプ別で向いている人の特徴を解説します。
●クラシック:温度変化で様変わりする味わいを楽しみたい日本酒嗜好者。和食と日本酒のペアリングを堪能したい人。そして、華やかな香りやフレッシュな味わいよりも、地に足のついた深みある旨味や落ち着きを好む人にピッタリです。
●モダン:女性や日本酒ビギナー、今まで日本酒を敬遠していた人。また、モダン系日本酒は肉料理やスイーツとの相性も良いので、ワインやビールといった他のアルコール飲料をよく飲まれる人にもオススメです。
【まとめ】
今まで説明した内容を要約するとクラシック系は『伝統的な製法で造られ、キレのある淡麗辛口や温度変化を楽しめる濃醇旨口が分類され、和食と好相性』。
一方でモダン系は『伝統的製法と現代の造り方を掛け合わせることで生まれる、フルーティーな香りやフレッシュな味わいが楽しめる日本酒が分類され、洋食やスイーツとも共に楽しむことができる』という解釈です。
ぜひ、酒販店でお酒を提供するときや居酒屋で料理と共に日本酒を楽しんでもらう際の参考にしてみてください。
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
18日配信 アメリカの日本酒販売状況@True Sake(サンフランシスコ)
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先日、アメリカのサンフランシスコとロサンゼルスに行く機会があり、現地の小売店で日本酒の取り扱い状況を視察しました。
アメリカの日本酒販売状況のレポートとして、第一回に続き、サンフランシスコの小売店を取り上げます。尚、本レポートはトランプ関税が発動する以前のものになります。
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サンフランシスコの「True Sake(トゥルー・サケ)」は、米国初の日本酒専門の小売店として広く知られています。
また、サンフランシスコで10年以上続く大規模な日本酒イベント「Sake Day(サケ・デイ)」を主催しており、毎年多くの輸入や販売事業者、一般の消費者が来場して数々の日本酒を楽しんでいます。
True Sakeの特徴は、ボトルの首にかけられたカラフルな紐。「70% Junmai(純米)」「60% Ginjo(吟醸)」「40•50% Dai ginjo(大吟醸)」「Unique(ユニーク)」「Sparkling Nigori(スパークリングにごり)」「NAMA unpasteurised(生酒)」の6種類に色分けされており、消費者はラベルを読まなくても一目でどのスペックなのかが分かるようになっています。
また、各お酒には手作りのPOPが用意されており、酒蔵名や所在地、日本酒度、酸度といった基本的な情報が記載されています。さらにユニークなのが、オリジナルのテイスティングノートや一言でそのお酒を表す言葉、ワインやビールに例えた時のテイスト、おすすめのペアリングについても詳細に書かれていること。
AKABU『極上ノ斬』を例に取ってみると、ワインでは「深みのある赤ワイン/まろやかな白ワイン」、ビールでは「クリーミーなエールビール」と書かれていました。もう一つ、かたふね『大吟醸 斗瓶』を例に挙げると、前者では「深みのある赤ワイン/複雑さのある白ワイン」、後者では「風味豊かなベルジャンビール」とあります。
こういったワインやビールに例えた時の記載があることで、普段日本酒は飲まないがワインやビールなら飲むという消費者も、自分の好みに合ったお酒を選びやすくなります。
更に、おすすめのペアリングは米国ならではの国際色豊かな料理が並んでいました。例えば農口尚彦研究所『山廃 美山錦』では「米国流の寿司、鶏肉、パスタ、世界のスパイス」、笑四季『センセーション 白ラベル』では「ロブスター、タコス、バーガー、柑橘を添えた料理」などが提案されており、和食以外とのペアリングの可能性を大いに感じました。
次回は現地系スーパーマーケットでの様子をレポート予定です。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
11日配信 アメリカの日本酒販売状況@Umami Mart
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先日、アメリカのサンフランシスコとロサンゼルスに行く機会があり、現地の小売店で日本酒の取り扱い状況を視察しました。
アメリカの日本酒販売状況のレポートとして、第一回はサンフランシスコの小売店を取り上げます。尚、本レポートはトランプ関税が発動し円高が進行する以前のものになり、文中では$1=¥150で計算しています。
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サンフランシスコでまず初めに訪れたのは、日本酒や焼酎の他、日本製のキッチンウェア、グラスウェアなどを扱う日本商品ショップ「Umami Mart(ウマミ・マート)」。後ほど取り上げる「True Sake(トゥルー・サケ)」と並んでサンフランシスコ近郊で日本酒を買うならここ、と言われるほど豊富な品揃えを誇ります。
壁一面の棚には「獺祭」(山口)「剣菱」(兵庫)「八海山」(新潟)などの大手酒造会社の他、「鍋島」(佐賀)、「天吹」(佐賀)、「酔鯨」(高知)、「千代むすび」(鳥取)、「紀土」(和歌山)、「天狗舞」(石川)、「雪男」(新潟)、「惣誉」(栃木)、「伯楽星」(宮城)といった全国各地の日本酒が並んでいました。驚いたのは「雨降」(神奈川)があったこと。日本でもほとんど見かけない珍しい銘柄がサンフランシスコに置かれていることにびっくりしました。
価格のボリュームゾーンは$25〜45(≒¥3,750〜¥6,750)で、「現地で日本酒を売ると日本の3倍の価格になる」と言われますが、それを実感するような価格帯でした。アメリカでお酒を販売する際は「3ティアシステム」と呼ばれる①製造者または輸入者②卸売業者③小売業者の①〜③全てが別法人でなければならないというルールがあり、輸送費に加えて中間のマージンが嵩むことが理由の一つとしてあるようです。
日本酒にはそれぞれの味わいやスペックを表すポップが貼られており、特に興味深かったのはProfile(性質)の欄。Umami(旨味)、Acidic(酸味)といった五味の要素でそのお酒に特徴的なものをピックアップする他、Juicy(ジューシー)、Fruity(フルーティー)、Balanced(バランスの取れた)といった味わいを形容する言葉やLemon curd(レモンスライス)、Fresh cheese(フレッシュチーズ)といった食品に例える言葉が書かれており、消費者がそれぞれの好みに合った日本酒を選びやすいよう工夫されています。
更には、日本では一般的なRice polishing (精米歩合)、SMV(日本酒度)、Acidity(酸度)の記載もありこういったスペックで選ぶ層も一定数いるのではないかということが伺えました。
次回は「True Sake(トゥルー・サケ)」での取り扱い状況についてレポートします。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
4日配信 今週おすすめの1本は、「水芭蕉 PURE」。
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今回ご紹介する1本は、日本酒の製法とスパークリングワインの製法、2つの製法で生み出されたスパークリング清酒。
瓶の中で発酵させる製法(瓶内二次発酵)を行うことで、非常に滑らかな泡を含んだ日本酒。泡の心地よさ、澄んだ外観、繊細な香りが食前酒に最適で
世界中のレストランで提供されている。
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<テイスティングコメント>
外観:無色透明で発砲している。
香り:梨やりんご、ライチのようなフルーツの香りをほんのりと感じる。
味わい:口に含むと滑らかでキメの細かい泡を感じ、
すっきりとしたミネラル感の中に隠れた梨やライチのような甘味が繊細に
感じられる。飲み進めていくとお米の甘みを余韻に感じる。
爽酒(軽快で滑らかなタイプ)に該当。
酒器は、泡の抜けにくい、口の部分がすぼんでいるフルートグラスがおすすめ。
また、繊細な香りも感じられるよう、提供温度は10℃前後の花冷えが適している。
<ペアリングについて>
軽快な味わいの為、どんな料理とも合わせやすい。
ただし、繊細な日本酒の香りが打ち消されやすい為、日本酒が引き立つペアリングとなるように注意する。
<具体的なペアリング>
・ホタルイカとねぎのぬた和え
…ぬた和えとは、酢味噌和えのこと。見た目が沼田のようであることが由来。
味噌、りんご酢、上白糖、辛子を混ぜ合わせ、茹でた具材に和えれば完成。
辛子は少なめにし、レモン果汁をかけて酸味を強めにすると日本酒との相性が
より良くなる。
バランスの良いマリアージュ。
・ゼンマイと油揚げの煮物
…生のゼンマイを使用する場合は下茹でし、重曹で一晩おく。
出汁、上白糖、薄口醤油で具材を煮込み、さらに一晩おけば完成。
やや甘めに味をつけることで、日本酒の香りが引き立つペアリングとなる。
・エビのペンネサルサローザ
…サルサローザはイタリア語で「バラ色のソース」を意味する。
トマトと生クリームがベースのソースのこと。
フライパンに刻みニンニクとオリーブオイルを入れ、弱火にかける。
香りが立ったら、エビを加えて火を通す。
そこに、トマトソース、生クリーム、茹でたペンネを入れ、しっかりと絡むように
ソースを煮詰めて完成。
エビの甘みとクリーミーなソースのコクが引き立つペアリング。
・富貴豆(ふうきまめ)
…山形県発祥の青えんどう豆を甘く炊いた豆菓子。
青えんどう豆の優しい甘さが日本酒のキメ細かな泡とよく合う。
今の季節にもピッタリな、甘さと爽快感が楽しいペアリング。
この日本酒は、初夏に旬を迎える食材の多くと相性が良い為、
是非この時期ならではのペアリングを試してみて欲しい。
<商品説明>
商品名:水芭蕉 PURE
製造者:永井酒造株式会社(群馬)
分類:スパークリング清酒
原材料名:米、米こうじ
原料米:兵庫県三木市 三木・別所地区産 山田錦
精米歩合:非公開
アルコール度数:13度
参考価格:720㎖ 5,451円(税込)
360㎖ 3,031円(税込)
料理人/唎酒師ライター おえの ゆかり
2025年5月 |
28日配信 【今週オススメの1本】今夏オススメの季節酒! 温度変化を楽しむ「玉川 純米吟醸 Ice Breaker」
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今回は代表銘柄「玉川」を醸されている京都府の酒蔵「木下酒造有限会社」より、夏らしさ全開のボトルデザインと明確な味の変化が楽しめる純米吟醸酒「Ice Breaker(アイスブレーカー)」をご紹介します。
オススメの飲み方や一緒に合わせたいペアリンググルメなども合わせて解説していきますので、参考にしてみてください。
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【特徴】
「玉川 純米吟醸 Ice Breaker」は全体的な香味の特徴に清涼感のある爽やかな香り、口に含むとふわっと広がる柔らかな米の旨味や酸感があります。
今回の紹介酒を実際に飲み楽しむうえで知っておいた方が良いポイントを3つ解説します。
1.デザイン性
瓶は透き通った青色を採用し、ラベルには南極を歩くペンギン親子の姿が描かれた清涼感のあるデザインが採用されています。
これから暑い日が訪れる夏に向けて、見た目から涼やかさが楽しめるのも一興でしょう。
2.バリエーション豊かな味わい
紹介酒はアルコール度数が18度と高めで骨太な酒質なので、ロックや炭酸割りにしても味が薄れる心配はありません。さらに冷酒、常温、燗酒と温度別で様変わりする味わい全てにおいて「飲み応えがある」のも魅力的です。
3.長期的な品質保持
日本酒は一般的に開栓した後、一定期間が経過すると色が黄色みを帯びたり香りが鼻につく、苦味や酸味が際立つなどの「劣化」が発生してしまいます。
しかし、今回の紹介酒「Ice Breaker」に関しては保存状態にもよりますが、劣化しにくいという特徴があります。数ヶ月~数年間ほど熟成して、ゆっくりと味の変化を飲み楽しむのもオススメです。
【オススメの飲み方】
醸造元の玉川酒造が推奨する飲み方:「ロック」
氷の溶け具合に合わせて温度やアルコール度数は徐々に変化していき、それに伴って何パターンにも変化する味わいを楽しめる面白さがあるので、ぜひ体感してみてください。
私が推奨する飲み方:「熱燗」
約50℃まで温めてあげることで、ナッツのような燻製香が感じられ、ドシっとした旨味が堪能できます。そして本題はここから!
常温に向けて徐々に温度が下がる「燗冷まし」によって、感じられる香味やテクスチャーが変化していくのですが、常温に至るまでの温度帯全てで「美味しい」が体感できます。ぜひお客さまに提案してみてください。
【ペアリング】
紹介酒は芯の強い酒質なので、合わせる料理も濃い味わいのものが好相性です。
そこで5月~6月頃が一番美味しいとされる、旬食材を意識したペアリンググルメをご提案します。
・青椒肉絲(飲み方:冷酒、ロック)
オイスターソースや醤油などで味付けした牛肉やピーマンの旨味に、冷えた「Ice Breaker」の爽やかさや喉越しがベストマッチします。
・カレイの煮付け(飲み方:燗酒)
濃厚な出汁が染み込んだカレイの煮付けに、風味と旨味が増幅した「Ice Breaker」の燗酒を合わせることで、予想以上の相乗効果が期待できます。
【まとめ】
今回は木下酒造から夏時期に合わせて発売される「玉川 I純米吟醸 Ice Breaker」をご紹介しました。
本質的に力強い酒質があるので、温度別や割り方とどんなシチュエーションでも美味しく楽しむことができる夏酒といえるでしょう。
暑い日はキンキンに冷やして、料理とのペアリングを提案する際は燗酒や常温もマッチしやすいので、色んな提供方法で「玉川 I純米吟醸 Ice Breaker」の魅力を発信してみてください。
【日本酒情報】
・日本酒名:玉川 純米吟醸 Ice Breaker
・種類:純米吟醸酒 無濾過生原酒
・酒蔵:木下酒造(京都府)
・精米歩合:60%
・アルコール度:17度
・価格:税込1,320円(500ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
21日配信 日本酒アレンジの奥深さを徹底解説!
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本記事では1種類の日本酒で体現できるアレンジ方法やそれに伴う酒質の変化、期待できる効果について解説します。
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① 温度
飲み方として「冷酒」が一般的かと思いますが、常温や燗酒と温度帯によって異なる味わいを楽しめるのは日本酒特有の魅力です。
温度ごとの香味について詳しく解説します。
・冷酒
日本酒は温度が冷たくなるほどに喉越しがサラッと軽快になり、日本酒特有の酸感やアルコール感といったクセが抑制されるという特徴があります。
日本酒ビギナーや女性向けに提案する最初の一杯には、オススメ果実感のある華やかな香りと柔らかい旨味が感じられ、後味スッキリとした吟醸酒や大吟醸酒がオススメです。
・常温
約20~25℃で口に含むとほんのり冷たい温度を指します。なかでも純米酒が特に常温向きとされ、お米の豊かな風味を堪能することができます。
お客さまがご所望であれば純米酒の冷酒と常温を飲み比べを提供して、口あたりや味わいの違いを実際に体感してもらうのも良いでしょう。
・燗酒
約30℃以上で温めた日本酒は全般的に「燗酒」と呼ばれ、なかでもオススメの温度帯をご提案します・
「ぬる燗」
人肌と同じ約40℃ほどの温度を指し、お米のふくよかな香りや旨味が引き立ち日本人の舌に馴染みやすいテクスチャーとなる特徴があります。
種類としては純米酒、本醸造酒、吟醸酒、普通酒が向いています
「熱燗」
約50℃ほどの温度を指し、ぬる燗以上に日本酒の旨味や甘味といった個性が引き伸ばされます。もしお客さまが風味などを重たく感じられる場合は「燗冷まし」を勧めてみましょう。少し時間を置くことで徐々に温度が下がるため、好みの味わいになった温度で呑み楽しめるという強みがあります。
② 追加
次は日本酒のアレンジ方法についてご紹介します。
・ロック
骨太な酒質をスッキリと楽しみたいときにオススメの飲み方がコチラです。
グラスにロック氷をたっぷりと投入し、日本酒はグラスの半分ぐらい入れます。氷が徐々に溶け出すことで味わいも少しづつ柔らかくなり、呑み心地も快適となります。
・カクテル
日本酒はカクテルのベースにも向いている素質があり、近年では日本酒カクテルも注目されています。グレープフルーツやオレンジ、キウイなどを生搾りしたり、手軽にフルーツジュースや果実酒を加えれば、十分に楽しむことができます。
割り方の一例を下記にてまとめておきます。
1.日本酒3:ライムジュース1
ライムの爽やかな香りと酸味が加わることで、スッキリとした呑み心地になります。
2.日本酒1:トニックウォーター1
口あたりは爽やかで日本酒の深いコクとトニックウォーターのほのかな甘みがマッチします。
3.日本酒5:カルピス原液1
乳酸飲料の濃厚な甘みや酸味がマッチし、日本酒特有のアルコール感や酸感は軽減されるため、日本酒ビギナーにはオススメの飲み方です。
4:日本酒+氷+生搾りフルーツ
鮮やかなビジュアルとなり、少し苦手意識のあるタイプの日本酒でも呑みやすくなります。もし改善されない場合はソーダで炭酸割り、ガムシロップで少し甘くすればより呑みやすくなります。
5:日本酒+グレープフルーツジュース+塩
これから暑くなる季節にピッタリな飲み方です。
グレープフルーツの爽やかな味わいと塩の塩味が加わることで、よりスッキリとしたテイストになります。
【まとめ】
今回は温度や割り方で美味しく日本酒を楽しむ方法を解説しました。
数多くの銘柄を取り扱う居酒屋や日本酒Barでは、1つの日本酒に対して複数の飲み方を提案して飲み比べを楽しんでもらう。
酒販店であればお客さまに日本酒を販売する際に、家で手軽に楽しめるオリジナルな飲み方も一緒に提案してみるなど。
様々な提供方法を通して消費者に対して日本酒の奥深さや面白さ、飲み方の幅広さをぜひ伝えてみてください!
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
14日配信 Z世代酒匠がおすすめする「今週の注目の一本」は小鶴 the Banana/小正醸造(鹿児島)です。
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「こいつはもはや、バナナ」の売り文句とラベルに大きくデザインされたイラストの通り、従来の芋焼酎のイメージを覆す濃厚なバナナの香りが斬新な一本。
フルーティーで華やかな香りとスッキリとした味わいは、焼酎ビギナー層への提供にもおすすめです。
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商品紹介
・商品名:小鶴 the Banana
・酒蔵名:小正醸造株式会社(鹿児島県日置市)
・原料:さつま芋(黄金千貫)、米麹
・参考価格(税込):1,408円(900ml)
・その他:白ワインに使われる葡萄の品種である「ソーヴィニョン・ブラン」由来のワイン酵母を使用しています。
黄金千貫とは
小鶴 the Bananaに使われている黄金千貫(こがねせんがん)とは、さつま芋の品種の一つです。芋焼酎に使われるさつま芋の品種は、外皮や果肉の色によって「白系」「赤系」「オレンジ系」「紫系」の4種類に分類されます。黄金千貫は「白系さつま芋」の代表格であり、今から50年以上前の1966年に九州農業試験場で開発されました。デンプンの含有量が豊富なため一度の仕込みで多くの量が作れることや、クセのない香味で使いやすいことから、芋焼酎の9割以上に使用されています。
香りと味わいの特徴
従来の焼酎のイメージを覆す、熟したバナナのような甘く濃厚な香りが印象的。バナナの香りの奥にレンゲの花の蜂蜜や綿飴のような甘味を思わせる香りがふんわりと漂います。
テクスチャーはキメが細かく柔らか。含み香はやや強く、バナナ、焼き芋、甘栗のような濃密でとろりとした甘味を思わせる香りです。後味にはアルコール由来の柔らかな苦味が感じられますが余韻は短く、濃厚な香りに反して味わいはスッキリとした印象です。
おすすめの楽しみ方
<酒器>
フルーティーかつ華やかな香りを感じやすい、口がすぼまったワイングラスや脚のないワイングラスがおすすめです。ソーダ割での提供の際は、フルートグラスや高さのあるグラスを使用することで、炭酸のシュワシュワ感を視覚でも楽しむことができます。
<割り方>
ソーダ割にすることで、フルーティーなバナナの香りが際立つとともに後味の爽快感を楽しむことができます。
予め氷を入れたよく冷えたグラスに焼酎を入れ、2~3倍の量の炭酸水で割って提供するのがおすすめです。
<合わせる料理>
旨味やコクがあるタイプの芋焼酎とは違ったフルーティーなタイプなため、カプレーゼやカルパッチョなどのシンプルな味付けの前菜やベトナム風生春巻き、フルーツサラダなどの生野菜を使った料理と好相性です。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
7日配信 Z世代酒匠がおすすめする「今週の注目の一本」は玄宰 特別純米 生/末廣酒造(福島)です。
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厳しい冬の寒さ、澄んだ清らかな水、豊かな土壌に育まれた米。
酒造りに必要な要素が揃い、多くの蔵が集まる酒どころの会津。
その酒造りの基礎を築いたとも言われる会津藩の名家老「田中玄宰」の名前を冠した、コストパフォーマンス抜群の一本です。
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商品紹介
・商品名:玄宰 特別純米 生
・酒蔵名:末廣酒造株式会社(福島県会津若松市)
・精米歩合:55%
・原料米:夢の香(福島県会津産)
・アルコール度数:15度
・参考価格(税込):1,760円(720ml)
・その他:鑑評会出品酒として末廣酒造のフラッグシップに位置付けられていた高級酒「玄宰」を、手に取りやすい価格の日常酒としてリブランディングしたのが「玄宰シリーズ」です。現在は特約店限定で販売されています。
ブランド名の由来
ブランド名の由来である田中玄宰(はるなか)は会津藩の名家老と呼ばれた江戸時代後期の人物です。
1781年に34歳で家老に就任後、財政状況が悪化していた会津藩を立て直す数々の改革を行いました。その一つが酒造業の振興です。
大阪から杜氏を招いて酒造りを学ばせ、藩直営の酒造蔵で「清美川」という銘柄を造って江戸へ売り出したそうです。
全国で4番目に多い約60の酒蔵がある福島県の中でも、その半数が集中する会津地方。その礎を築いたとも言える田中玄宰の名前を冠し『会津を醸す』をコンセプトにして造られています。
香りと味わいの特徴
澄んだ、ごく淡い黄色の外観。
香りはフルーティーですが、料理の邪魔をしない程度の穏やかなものです。
口に含むと白桃や白葡萄の果汁を思わせるフレッシュで瑞々しい甘味を、仄かに苦味の伴なったガス感が引き立て、白ワインのような輪郭のはっきりしたジューシーな酸味が続きます。最後には冬瓜やクレソンのような繊細な苦味が現れます。
甘・酸・苦とひとつひとつの味わいの要素は鮮やかながら緻密に計算されたバランスによって重さを感じさせない、完成度の高い一本です。
おすすめの楽しみ方
<温度帯>
フレッシュ&ジューシーな甘味や酸味が特徴のため、まずは白ワインと同じく程よく冷やした8~12℃の温度帯がおすすめです。
時間の経過とともに温度が上がると、綿飴のようなふんわりとしたほのかな甘味が次第に顔を出します。
<酒器>
温度変化が楽しめる、やや大きめサイズのワイングラスやお猪口での提供がおすすめです。
<料理>
生酒ならではのピチピチとしたガス感と程よく冷えた温度は、マリネやタルタル、カルパッチョなどの冷やして食べる前菜によく合います。白ワインのようなすっきりとした酸味もあるため、イタリアンやフレンチなどの洋食とも合わせやすいでしょう。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
2025年4月 |
30日配信 料理の本質を引き立てる土佐辛口酒「辛口吟醸 大吉祥」
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今回は高知県にて土佐酒を長年醸造されている土佐鶴酒造のなかでも「淡麗辛口」濃度が高い銘柄「辛口吟醸 大吉祥」をご紹介していきます。
特徴やオススメの温度帯、季節を取り入れたペアリングなども合わせて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【特徴】
1:吟醸辛口な酒質
土佐鶴酒造が揃える銘柄のなかでも、特に高知県のお酒らしさを感じられるスッキリと辛口テイストな喉越しが特徴にあります。吟醸香は華やかながらも柔らかい程度なので、料理の味を妨げることなく食中酒として重宝しやすい1本です。
2:ラベル
銘柄名にある「大吉祥」には『大いにめでたい兆し』という意味があります。これを紐づけるかのように、、2羽の鶴が雄大に羽ばたいている姿が描かれたており、お祝いやめでたい席にも提案しやすいデザインとなっています。
【適正温度】
冷やから燗酒まで様々な温度帯で楽しむことができますが、なかでも今回はオススメの適正温度をご提案します。
・冷酒(約10℃):サラッと喉越しの良い辛口感が十分に堪能できます。
濃口系の料理に合わせることで、口の中に残った油分を心地よくリセットしてくれる「ウォッシュ効果」も見込めるので、どの場面で提供しても食べ飲み疲れさせないのもポイントです。
・ぬる燗(45℃)
口あたりは滑らかで香味ともに落ち着きのある味わいとなり、飲み終わりにかけては、土佐酒らしい酸感が余韻として楽しむことができます。
提供料理としては揚げ出し豆腐やいぶりがっこ、鍋料理などが好相性なので是非。
【ペアリング】
紹介酒は生粋の淡麗辛口となりますので、魚介の握り寿司や刺身が鉄板!
漬物やイカの酢味噌和え、酒盗(カツオやマグロの塩辛)といった軽めの肴で、気軽にお酒を楽しんでいただくのも一興です。
また、春にはたけのこや鰹、ほたるいかなど様々な食材が美味しい季節となります。そこで旬食材を使ったオススメペアリンググルメを2品ご紹介します。
・鰹とたけのこの角煮
醤油、生姜、みりん、砂糖、お酒で鰹とたけのこをじっくりと煮込んだ一品。たけのこの甘みとほろ苦さに、鰹の旨味が調和しており、サラッとキレる吟醸辛口系と相性良好ですよ。
・ホタルイカの生姜煮
こちらは手軽な調理方法でおつまみとして喜ばれやすい一品です。だし汁、醤油、みりん、砂糖、生姜を鍋に入れて沸騰させ、そこにホタルイカを加えひと煮立ちさせた後に冷まして味を染み込ませるだけ!
口に運ぶとワタの旨味と生姜の香り高い風味がふわっと広がり、「辛口吟醸 大吉祥」とのペアリング度も満点ですよ。
【まとめ】
今回は土佐鶴酒造の「辛口吟醸 大吉祥」をご紹介させていただきました。
スッキリと軽快な飲み心地と香りを楽しみたいときは冷酒で。温かい料理や肴となる一品と共にしっぽり楽しみたいときはぬる燗と、シチュエーションごとで幅広い提供方法ができますので、ぜひ役立ててみてください!
【日本酒情報】
・日本酒名:辛口吟醸大吉祥
・酒蔵:土佐鶴酒造(高知県)
・種類:吟醸酒
・精米歩合:50%
・アルコール度:15度
・日本酒度:+8
・販売価格:税込1,467円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
23日配信 希少米で醸した香味バランス優秀な純米酒「二兎 純米 萬歳七十」
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今回は愛知県を拠点に代表銘柄「二兎」を造られている「丸石醸造株式会社」より、地元で育てられた希少なお米を用いて二兎の本質もたっぷり堪能できる純米酒「二兎 純米 萬歳七十」についてご紹介していきます。
オススメの飲み方やペアリングなども合わせて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【特徴】
1.長い眠りから蘇った希少米「萬斎」
今回の紹介酒を醸造されている丸石醸造がある愛知県岡崎市で栽培されている飯米「萬歳」。
この萬歳は大正時代、天皇即位の際に行われていた「大嘗祭」にて、五穀豊穣と国の安寧を祈願する儀式で奉納されていたとされる由緒ある品種です。
一時期は途絶えていたそうですが、約100年ぶりにたった10gの種籾から地元農家の手で復活させることに成功したそうです。
特徴として心白が大きいため酒造りに最適。心地よい甘味と酸味を含んだ酒質になるそうで、酒米として名高い「雄町」にも負けない優れた特性を持っています。
2.香味
香りはグラスに注ぐと、レモンやグレープフルーツのような瑞々しい甘さのある香りがふわっと感じられます。
口に含むとトロッと滑らかな口あたりから入り、コクのある旨味とじわっと広がっていく甘みが感じられます。加えて軽やかな酸感とほのかな苦味も共存しており、複雑味も兼ね備えております。
飲み終わりにかけては二兎の本質である甘味から辛味への流れ変わりに、ガス感も絡みキレの良さも抜群です。
【適正温度】
酒蔵推奨の適正温度は冷酒~常温。ただ個人的にぬる燗もオススメです。
約40℃ぐらいまで温めてみたところ、冷酒と比べて甘さがより鮮明に感じられ、酸味は少し抑えめに。燗酒ならではの良さが顕著に表れており、旨味も十分に堪能できますので、お客様の好みに合わせて提案してみてください。
【ペアリング】
今回の紹介酒は五味(甘味・辛味・苦味・渋味・旨味)のバランスが綺麗に取れた純米生酒なので、旨味や濃度がしっかりとした手羽先の唐揚げや魚の干物などが合わせやすいでしょう。
そこで旬の食材を取り入れた、味わい濃厚なオススメペアリングを2品ご紹介します。
・カレイと牛蒡の煮付け
酒・醤油・みりんなどで甘辛く煮付けたカレイと牛蒡は旨味もたっぷりと含んでおり、冷酒と燗酒どちらでも好相性。
・新じゃがの味噌グリル
4月下旬から5月にかけて旬を迎える新じゃがを使った一品。味噌を基調に砂糖や醤油、酒を合わせた甘辛い味噌だれをまとった、ホクホクの新じゃがは冷酒とのペアリング度は満点です。
【まとめ】
今回は愛知県の丸石醸造で造られている日本酒「二兎 萬歳七十」をご紹介させていただきました。
全体的にバランスが綺麗な純米酒なので、温度別や様々なペアリングを通して美味しさを伝えられることでしょう。
【日本酒情報】
・日本酒名:二兎純米 萬歳七十 生酒
・種類:純米酒
・酒蔵:「丸石醸造株式会社」(愛知県)
・精米歩合:70%
・アルコール:16%
・価格:税込1,485円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
16日配信 Z世代酒匠がおすすめする「今週の注目の一本」は醸し人九平次 いのね 四つ星/株式会社萬乗醸造(愛知)です。
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200㎞離れた兵庫県に持つ自社田に毎年通い理想を追求した米作りを行う酒蔵が生み出す、米の品質にとことん拘った一本です。
上品な香り、滑らかな口当たり、繊細な甘味と渋味が口の中で調和し絶妙なバランスを保ちます。
余韻が残る最後の一瞬まで丁寧に味わいたい逸品です。
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商品紹介
・商品名:醸し人九平次 いのね 四つ星
・酒蔵名:株式会社萬乗醸造(愛知県名古屋市)
・精米歩合:非公開
・原料米:山田錦
・アルコール度数:16度
・参考価格(税込):5500円(720ml)
・その他:
諸説ある「稲」の語源のうちの一つとして、「命の根」という説に着目して名付けられた銘柄が今回取り上げる「いのね」です。
命を育む大切な存在である稲=米を重視した「いのね」シリーズには三つ星、四つ星、五つ星の3種類のラインナップがあります。
その違いは米のグレード。醸造用玄米は農林水産省の基準によって「特上、特等、1等、2等、3等、規格外」と分けられます。萬乗醸造では更に醸造適性を加味した独自の基準を使って、自社田の米を評価しています。
「いのね」シリーズに使われるのは特等以上、かつ独自基準で三つ星、四つ星、五つ星を取った米のみという贅沢な造りになっています。
蔵の特徴
「醸し人九平次」のブランドで知られる萬乗醸造は1647年、現在の愛知県名古屋市で創業しました。蔵元は代々「九平治」という名前を襲名し、現在の久野九平治氏が15代目にあたります。
萬乗醸造のこだわりは何と言っても山田錦の最大の産地である兵庫県に自社田を持ち、蔵人が米作りを行っていること。
米を育てる土地の個性(=テロワール)と天候の影響を受けた収穫年による個性(=ビンテージ)の2つをお酒の味わいを決める要素として重視し、「一粒が重い」理想の米を作れる土地を探して見つけ出したのが兵庫県黒田庄でした。
蔵人達は愛知県から約200km離れた黒田庄に毎年通い、理想を目指した米作りに励んでいるそうです。
香りと味わいの特徴
瑞々しい梨を思わせる穏やかな香りです。
口当たりは滑らかで全く角がなく、良い意味で澄み切った水のようになんの抵抗もなくすっとお腹の中に落ちていきます。
梨や白桃といった果物を思わせるジューシーな甘味と米の柔らかく丸みのある甘味が見事に調和し、後味に感じる少しの渋味が全体の印象を引き締めます。
何かひとつの香りや味わいが突出するということがなく、調和のとれたバランスの良い印象です。
おすすめの楽しみ方
<温度帯>
甘味は冷やしすぎると感じにくくなり、逆に温めすぎるとだれた印象になってしまうという特性があります。そのため、このお酒の特徴である繊細でエレガントな香りや甘味を味わうには、冷蔵庫から出して少し経った頃合いの温度(8~12℃)での提供が適しています。
<酒器>
ワイングラスや大吟醸用のグラスなど、口がすぼまっていて香りを感じやすい酒器がおすすめです。
<料理>
刺身や山菜の天ぷら、鶏の水炊きなど素材の味を感じられるシンプルな料理と好相性です。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
9日配信 日本酒フォトライターが解説! 簡単で綺麗に撮れる日本酒の撮影方法
酒販店での販売用や飲食店での提供用に入荷した日本酒を、SNSなどにアップするために撮影するものの、なんか綺麗に撮れないと思ったことはありませんか?
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実は撮影時の明るさや角度、小道具など少し工夫をすることで写真映りは綺麗になります。
そこで今回は様々な日本酒を撮影してきた「日本酒フォトライター」という視点から、初心者でも綺麗に撮影できるコツを解説していきます。
【光の位置】
撮影時に一番重要となるのが対象物を照らす「光」の位置です。前後左右、斜めなど対象物を照らす方向で写り方の綺麗さは変わります。
この光の位置をマスターできれば、スマホでも十分に綺麗な写真が撮影できますので、今回はオススメの角度を解説します。
・半逆光
撮影時に基本的かつ綺麗に撮れる光の角度は「半逆光」とされており、対象物の斜め後ろ45度から光を当てるイメージです。
効果としては被写体に立体感が演出でき、被写体の後ろも明るくなります。
・半順光
これは対象物に対して斜め前45度から光をあてるイメージです。
お酒を注いだグラスと料理を共に撮影する際、半逆光だと日本酒の瓶で無駄な陰影が付く場合がありますが、半順光であれば手前が明るくなるため、料理も鮮明に撮影できます。
ここで光を用いて撮影する際の重要なポイントがあります。
① 部屋の照明を消して自然光で撮影
部屋の電気を消して窓から差し込む自然光を駆使して撮影してみてください。全体的に柔らかい明るさに包まれ、程よい立体感が演出できます。
自然光が無い場合は、自作できる簡易ライトボックスがオススメです。
段ボールの底をくり抜き、トレーシングペーパーを底に貼り、中から懐中電灯を照らせば自然光同様の役割を担いますよ。
②光の反射
これは半逆光での撮影時に重要となります。
対象物の斜め後ろから光を照らすため、手前はどうしても少し暗くなります。通常、カメラマンは光を反射させる「レフ板」を使用して手前の影を無くし、日本酒と料理の複合撮影なども全体的に明るく撮影しています。
レフ板は自作もできますが、面倒なときはコピー用紙などの白紙でも代用可能です。
半逆光から光が差す方向に白紙を構え、光を屈折させて料理などにあてるイメージで白紙の角度を調整すれば、鮮明な写真を撮ることができます。
【撮影角度】
日本酒を撮影する際、ラベルの位置と並行になる高さから撮影することで瓶の形が歪むこと無く撮影できます。しかし瓶の色によって自分が映り込む場合があります。その際は以下の方法を試してみてください。
・2倍以上のズームにして離れて撮影
日本酒を自分の目に映る景色同様に撮影するなら、約1m~1.5mほど離れてのズーム撮影が適しています。またズームすることで歪み問題もより解消できますよ。
もし、完璧に写り込みを無くしたい場合には100円ショップなどで販売されている「スマホ用三脚スタンド」を用いてのタイマー撮影がオススメです。
【背景紙や小道具の使用】
季節感や日本酒のタイプに合わせて、背景や小道具などをプラスすれば一際目を惹く写真を撮ることができます。
・背景紙
手軽に試すなら100円ショップで販売されている厚紙や模様が描かれたボードでも十分です。また、手芸センターには布や和紙系など材質や色など種類豊富に揃っているうえ、意外とお手軽に購入できるのでオススメです。
・小道具
春酒なら桜の木、夏酒なら風鈴やすだれ、秋酒なら紅葉、冬酒なら綿を雪に見立てるなど、画角内にひとつ季節感のあるアイテムを入れるだけで、写真の出来栄えは大きく変わってきます。
こういった小道具も100円ショップで幅広く取り揃えられています。
【SNS掲載時の注意点】
みなさん綺麗に撮影した写真をSNSに掲載すること多いと思います。そのなかで酒類の掲載や宣伝時に注意しておくべきSNSが「Instagram」です。
規約内にて「アルコールは制限されているコンテンツであり、ブランドや酒蔵とのタイアップ投稿をする際は、年齢設定(20歳以上)が必要」とされています。
加えて通常の投稿時は「ハッシュタグ」にも要注意です。
投稿の文章内は注視されておりませんが、ハッシュタグに「日本酒」「お酒」「カクテル」などを付けると、規定違反として投稿が削除される場合があります。
解決方法として「日本酒が飲める居酒屋」「日本酒好き」「季節のお酒」などキーワードに付随した言葉を装飾して、文章化したハッシュタグであれば投稿可能となります。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
今回解説したポイントを徐々にでも良いので取り入れながら、素敵な日本酒フォトを撮影してみてくださいね。
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
2日配信 燗酒にして料理と共に堪能したくなる土佐酒「美丈夫 特別本醸造」
今回は代表銘柄「美丈夫」を造られている、高知県の酒蔵「濱川商店」から「美丈夫 特別本醸造」についてご紹介します。
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オススメの飲み方やペアリングなども合わせて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
【特徴】
① 提案できる温度帯の幅が広い
今回の紹介酒は「燗にして旨い食中酒」というコンセプトがあります。
まず40~45℃ぐらいでつけたぬる燗の場合、全体的に味のまとまりがありつつも奥深いコクと余韻がしっかりと体感できます。甘みも程よく感じられるなかでキレの良さはしっかりと残るのも特徴的。
冷酒の場合は約5℃の雪冷えがオススメ。軽快な喉越し感と口中をリフレッシュしてくれる爽やかな酸味が相まって、飲み疲れせずに呑み楽しむことができます。
② 精米
酒米は愛媛県産の「松山三井」を起用しており、吟醸酒規格とされる60%まで精米されております。そのため吟醸酒のようなサラッとしたテイストが酒質に加わっています。
③ 香味
香りはほんのりとフルーティーさが感じられ、口に含むと味の膨らみ・力強さ・鋭いキレ感が印象的な味わいとなっています。
【オススメの酒器】
・冷酒:スッと流れる喉越し感を楽しんでいただきたいので、フルートやボルドーといった、細長いタイプのワイングラスを推奨します。
・燗酒:陶器製の猪口やぐい呑みであれば、膨らむ香りや旨味を十分に堪能することができるでしょう。
【ペアリング】
徐々に春らしい季節となってくる4月には鰆やしらす、たけのこにそら豆などが旬を迎えます。そこで今回は春頃に一番美味しくなる食材を使ったペアリンググルメをご紹介します。
・青椒肉絲
タケノコ、牛肉、ピーマンと食感を楽しる具材を盛り込み、オイスターソースやコチュジャンなどで味付けした旨辛な一品は冷酒や燗酒ともに相性良好。
口中に残った油分はしっかりとリセットしてくれるので、ぜひ試してみてください。
・鰆の酒粕漬け
酒粕の香り高い風味を効かせ、ふっくらと焼きあげた鰆には燗酒を合わせてみてください。
「美丈夫 特別本醸造」のふくよかな旨味と鰆の旨味が同調し合うのでオススメですよ。
【まとめ】
今回は濱川商店で造られた「美丈夫 特別本醸造」の魅力や楽しみ方などについてご紹介させていただきました。
冷やから燗酒まで様々な温度帯で楽しむことができ、土佐酒らしいキレ感とふくよかな旨味も堪能できる高品質な香味感でありながら、リーズナブルな価格帯で手に入るのはかなり魅力的だと思います。
食中酒としても活躍すること間違いなしなので、お好みの合わせ方でぜひご提供してみてくださいね。
【日本酒情報】
・日本酒名:美丈夫 特別本醸造
・酒蔵:濱川商店(高知県田野町)
・種類:特別本醸造
・精米歩合:60%
・アルコール度:14度以上~15度未満
・販売価格:税込1,100円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
2025年3月 |
26日配信 ベトナムのクラフトサケ事情(後編)
「ベトナムのクラフトサケ事情(前編)」に続いて、今回もベトナム・ホーチミンのクラフトサケ醸造所”MUA Craft Sake”での体験をレポートします。
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醸造所併設のレストランで筆者が頼んだ4種類のお酒についてご紹介します。
初めに注文したのが3種類の飲み比べセット。それぞれのお酒に合う料理が書かれたカードが付いており、和食以外を念頭に置いた興味深いペアリングだったので一緒に紹介します。
①グァバと金柑/SAKE GUAVA KUMQUAT
①~③の飲み比べを注文した際に、こちらが最も軽い味わいなので初めに飲むように推奨されました。優しい甘さと独特な青っぽさが併存したグァバの味わいに柑橘の風味がプラスされています。
現地の方に聞いた話では、ベトナムでは完熟していない青さが残ったままのフルーツをよく食べるそうです。このお酒も完熟した南国フルーツの味わいというよりはまだ若い果物特有のフレッシュな味わいを上手く活かしており、完熟した果物の濃密な甘さを表現する日本のクラフトサケとは一味違う仕上がりになっていました。
PAIRS WITH(合う料理):Green Vegetables(緑野菜)、Mushrooms(マッシュルーム)、Pickles(ピクルス)、Hard Cheese(硬いチーズ)
②スパークリングマルベリー(桑の実)/SPARKILING MULBERRY WILD PEPPER
鮮やかな赤色に、まず目を惹かれます。ベリーのような味わいですが、酸味が少ない甘口のスパークリングサケです。一緒に注文した脂身の多い豚肉の粕漬けとは、脂身とお酒の甘味が絶妙に調和しつつも、口内で弾ける炭酸と後味にほんのりと感じるワイルドペッパー(日本の山椒に似たベトナムの香辛料)の清涼感のおかげで甘ったるくなりすぎることがなく、相性抜群でした。
PAIRS WITH(合う料理):Fresh Salads(新鮮なサラダ)、Raw Fish(刺身)、Oysters(牡蠣)
③CT25純米酒/CT25 PURE RICE SAKE
酒造りに通常使用されるジャポニカ米ではなく、パラパラとした食感が特徴のインディカ米で作った清酒です。注文の際に”Strong”と説明されましたが、日本で飲む清酒と比べると通常程度の味の濃さのように感じました。
米の旨味がしっかり乗った醇酒タイプの純米酒を思わせる味わいでした。
PAIRS WITH(合う料理):Read Meat(赤身肉)、Nuts(ナッツ)、Goat Cheese(山羊のチーズ)
次に、にごり酒を注文しました。
④Cloudy Nigori
見た目も味わいもにごり酒そのものですが、どこかパクチーを思わせる要素も感じられる面白い味わいでした。ほろ苦くやや癖のあるハーブの存在感がクリーミーなにごり酒の後ろに隠れているような印象です。
ペアリングの紹介では刺身や牡蠣など日本でもお馴染みのものから、ピクルスや山羊のチーズなどその組み合わせもあるのか!と驚かされるもの、また、熟酒と合わせることが多いナッツを醇酒に合わせて紹介するといった意外性があり、お国柄の違いを感じられる面白い経験となりました。
最後に、和食からヒントを得たという現地の創作ベトナム料理を二つ、ご紹介します。
一つ目はカツオならぬ牛肉のタタキ。薄くスライスした玉ねぎと、カボスに似た柑橘がトッピングされており醤油風のソースでいただきました。
二つ目は焼きブンチャー。ブンチャーとは、米粉でできた麺を酸味のきいたスープに入れて食べる料理でベトナムのつけ麺とも呼ばれます。これはブンチャーのアレンジとして、焼いて固めた麺を鶏肉と一緒に串に刺して、ソースに絡めながら食べるスタイルでした。
ご紹介したのはほんの一例に過ぎませんが、海外でクラフトサケや清酒がどのような料理と合わせて提供されているかイメージする手掛かりになれば幸いです。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
26日配信 ベトナムのクラフトサケ事情(前編)
「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界から日本酒へ熱い視線が向けられる今、海外でも酒造りが盛んになっています。
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昨年11月、ベトナムのクラフトサケ醸造所へ行ってきました。その名は”MUA Craft Sake” 。
「紀土」で知られる和歌山県の平和酒造、べトナムを代表するクラフトブリュワリーであるEast West Brewing、新鮮な地元の食材にこだわった料理を提供するレストランMùaの3社が提携して始めた醸造所です。
”Local”にこだわった酒造りを行っており、原料には日本で一般的な粘り気のあるジャポニカ米だけでなく、パラパラとした食感が特徴のインディカ米も使用します。特に、国際コメコンクールで最優秀賞に選ばれた実績のあるベトナム産のST25というインディカ米はパイナップルとアーモンドのような香りを与えてくれるそう。
水ももちろん、不純物を濾過したうえで現地のものを使用。そして副原料にはパッションフルーツやグァバ、マンゴー、パイナップルなど南国ならではの果物が使われています。
MUA Craft Sakeには併設のレストランがあり、和食にインスピレーションを受けた創作ベトナム料理と一緒にMUAのお酒を楽しむことができます。
今回と次回の2回に分けて、現地で撮った写真を交えながらその様子をレポートします。
MUA Craft Sakeはベトナム最大の都市・ホーチミンの中心部、各国の大使館が多く置かれている富裕層が多いエリアにあります。
ダークトーンを基調としたシックな外観と、ネオンで装飾された「MUA」「ムア酒造」「CRAFT SAKE」のポップな看板が印象的です。
お店を入るとまず、棚に美しくディスプレイされたお酒が出迎えてくれます。
店内は天井が高く広々とした開放的な空間。奥にはタップルームがあり、タップから直接お酒が注がれる様子はまるでクラフトビールの醸造所のようです。
早い時間帯だったので客はまばらでしたが、外国人観光客もちらほらといて全体的にカジュアルな雰囲気でした。
気になるドリンクメニューはこちら。
オリジナルのクラフトサケとしては、クラシック、グァバと金柑、パッションフルーツ、スパークリングマルベリー(桑の実)、にごり酒の5種類が用意されており、好きなお酒を3種類選んで飲み比べができるセットもあります。
インディカ米を使ったCT25シリーズはピュアライス、パイナップルチリ、柚子ドラゴンの3種類。そして、季節限定メニューとしてジャスミンと蜜柑、プラムの2種類があります。
お値段は120mlで95,000~150,000ベトナムドン(≒570~900円)。日本と比べるとやや高い価格設定です。
クラフトサケの他には平和酒造の「紀土」純米酒や「無量山」純米大吟醸酒がボトルで注文できるようになっており、クラフトビールやウイスキー、ハイボールなど他のアルコールの種類も豊富です。
面白かったのが、オリジナルのサケカクテル。パイナップルチリのクラフトサケに柚子ピューレ、ライムの葉、ジンジャエールをミックスした「Sakerita」や清酒にカンパリとスイートベルモット(ワインにハーブやスパイスの風味を付けたもの)を加えた「Pure Negroni」、清酒にライチ果汁とフルーツを入れる「White Sangria」などがありました。中でもベトナムらしいと感じたのは「”Ca Phe Sua” Nigori」。Ca Phe Suaとは練乳をたっぷり入れたベトナムコーヒーのことで、これににごり酒を加えたカクテルだそうです。注文しなかったのですが、果たしてどんな味なのか非常に気になります。お値段はいずれも150,000ベトナムドン(≒900円)でした。
筆者はこの中からCT25ピュアライス、グァバと金柑、スパークリングマルベリーの3種の飲み比べとにごり酒を注文しました。
次回はそれぞれの味わいや料理との相性について紹介します。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
12日配信 宇宙と深海のロマンが詰まった「宇宙深海酒」の魅力を徹底解説!
皆さんは「宇宙深海酒」をご存知でしょうか?
こちらは高知県酒造組合などが取り組み、完成させたニュータイプの日本酒であり、簡潔に説明すると宇宙と深海の両方で培養に成功した酵母を用いて造られたお酒のことです。
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【宇宙深海酒誕生の経緯】
高知県酒造組合が「もっと全国の人に土佐酒を飲んでもらいたい」という想いから、2005年10月1日の「日本酒の日」に合わせて、宇宙深海酒造りのプロジェクトをスタートさせました。
最初は日本酒造りで重要な役目を担う「酵母」を宇宙ステーション内にて10日間滞在させます。宇宙空間は快適だったようで、1つも失われることなく培養に成功し、「宇宙酵母」が誕生。
続いて2019年に深海での培養に挑戦するものの、この時は高水圧と低水温に耐えきれず失敗に終わってしまいます。
そこで圧力に耐性をつけた酵母を育てあげ、2021年1月に再トライを試みます。
水深約6,000mの深海に4ヶ月間沈め、高水圧がかかる過酷な環境下のなか、なんと宇宙酵母5種と通常酵母6種が見事に耐え抜きました。
宇宙と深海の高低差が約406kmという長旅を経て、培養に成功した酵母を用いて造られたお酒が「宇宙深海酒」として、2021年12月22日に誕生しました。
【宇宙深海酒になれる条件】
先ほど誕生経緯についてご紹介しましたが、正式に「宇宙深海酒」とされるには条件があります。
宇宙を旅した種もみから増やした、高知県産の酒米「吟の夢」「風鳴子」のいずれかを用いて醸造する必要があります。
【特徴】
続いて香味特性やテクスチャー、ラベルなどについて解説していきます。
香り:少し爽やかさがありつつも複雑性も兼ねた香りがあります。
味:一般的な高知県の日本酒と比べると、やや熟成感が高くフルーティーさもあり、中盤から後半にかけては多重な酸味や旨味も感じられます。 また、テクスチャーに関してはまろやかながら軽快な喉越しが特徴的。
ラベル:実はラベルも注目ポイント。それぞれが宇宙や深海をイメージさせるような幻想的なデザインが描かれています。もし、お店などで提供する際はラベルもぜひ、お客様に見せてあげてください。
【宇宙深海酒ラインナップ】
現在までに高知県内7蔵から宇宙深海酒が発売されています。ラインナップは以下に記載させていただきます。もし、気になる銘柄があれば是非チェックしてみてください。
・安芸虎 純米大吟醸 深海の宇宙(有光酒造場)
・司牡丹 純米吟醸酒 宇宙深海酵母の酒(司牡丹酒造)
・南酒造 純米吟醸 土佐宇宙深海酒 CEL19(南酒造)
・松翁 純米酒 深海酒 DEEP OCEAN TRAVELER(松翁酒造)
・美丈夫 純米吟醸 宇宙深海酒(美丈夫酒造)
・亀泉 純米大吟醸 原酒 宇宙深海酒 Le Grand Voyage(亀泉酒造)
・無手無冠 純米吟醸 宙海(無手無冠)
【まとめ】
今回は高知県から2021年に誕生した新しい日本酒「宇宙深海酒」についてご紹介しました。
高知県のお酒は淡麗辛口とされていますが、宇宙深海酒はスッキリとしたテイストはありながらも、奥深い旨味や柔らかな香りが楽しめるのも魅力!
加えて様々な料理に適応できるポテンシャルを持ち合わせていますので、ジャンル問わず様々なペアリングが提案できるのもポイントです
酒販店などを通じて入荷できる機会がありましたら、ぜひ宇宙と深海のロマンが詰まった高知県の日本酒を多くの人にシェアしてみてはいかがでしょう。
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
5日配信 バナナみたいな甘い香りと奥深い旨味が魅力的な宇宙深海酒「深海の宇宙-Shinkai no Sora」
今回は高知県安芸市の酒蔵「有光酒造場」より、土佐酒らしい軽快な後口に濃醇な果実のような甘い香りとマイルドな旨味が加わった宇宙深海酒「深海の宇宙-Shinkai no Sora」をご紹介します。
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【特徴】
まず最初に宇宙深海酒について軽く説明を。
高度40万メートルのISS内で培養された清酒酵母を、6,200メートルの深海に4ヶ月間沈め、生存確率3億分の1と言われる過酷な環境下を耐え抜き誕生した「宇宙深海酵母」で醸されたお酒を指します。
1:原材料
今回の紹介酒には高知県産酵母「AA-41」が使用されています。こちらの酵母はバナナやメロンのような香り成分を多く生産する特徴があります。
また、お米も宇宙を旅した種籾から増やした酒米として、高知県産の「吟の夢」が使われており、スッキリと爽やかな酸味とふくよかな旨味をお酒に与えてくれる特徴があります。
2:香味
香りはバナナのような甘い吟醸香が優しくふわっと感じられます。
テクスチャーはマイルド系で、後半にかけて柑橘系の酸味と苦味でスッとキレるやや濃醇辛口系の酒質に仕上がっています。
さらに細かなガス感もあり、少し甘めなスパークリング酒に近しい感じでもあります。
【温度帯】
酒蔵推奨は冷酒となります。
補足としてはぬる燗も意外とオススメでしたので、お客さまに対して提供する際はシチュエーションやペアリングとなる料理に合わせて、2パターンでの飲み方を提案してみてください。
冷酒(10〜15℃):バナナのような吟醸香と優しい味わいが第一印象として体感できます。その後スッと流れるので飲み心地◎。
ぬる燗(40℃):香りと共に旨味や甘味部分に対して力強い存在感が現れてきます。
【ペアリング】
やや濃醇辛口な酒質ですので、旨味と程よい脂がのった肉料理がペアリングとして好ましい感じです。
色々とある中から、今回は3月に旬を迎える食材を使ったペアリンググルメをご紹介します。
・牛肉と筍のオイスター炒め
春時期が食べ頃な筍をたっぷりと使った一品。
オイスターソースとニンニクが効いた濃厚な味わいと紹介酒のマイルドな旨味がバランス良く、口の中に残る余分な油分だけをスッと流してくれます。
他にも上質な脂をまとった刺身や焼き魚、強い旨味とコクがある酢豚や天ぷらなども好相性なので、ぜひお試しあれ。
【まとめ】
今回は宇宙深海酒「深海の宇宙-Shinkai no Sora」の魅力やペアリングについてご紹介しました。
高知県の日本酒といえば淡麗辛口のイメージが強いかと思いますが、今回の紹介酒は全体的に丸みがあり、舌に馴染むような甘味と旨味が強み!
ぜひ各店舗様で自由にブランディングされながら、宇宙深海酒の魅力を伝えてあげてください。
【日本酒情報】
・日本酒名:深海の宇宙-Shinkai no Sora
・酒蔵:有光酒造場(高知県)
・種類:純米大吟醸
・アルコール度:15度
・精米歩合:50%
・日本酒度:+4
・販売価格:税込2,750円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
2025年2月 |
26日配信 今週おすすめの1本は、「笑四季 貴醸酒 モンスーン 山田錦」です。
こちらの笑四季酒造は滋賀県で1892年創業。
地酒であることにこだわり、全ての商品を純米かつ完全な手作りで醸されている。
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今回はそんな酒蔵から、貴醸酒をご紹介する。
<テイスティングコメント>
外観:ほんのわずかに濁っている。
香り:ナツメヤシ、スモーク香、ツツジ、メロンのような多彩な香りを強く感じる。
味わい:とろみのある口当たりで、ツツジやハチミツのような甘さとパイナップルのような酸味を感じる。
凝縮感があり、濃厚な味わいだが、上品で余韻も長い。
個性的な味わい。
醇酒(コクのあるタイプ)に該当。
提供温度は10℃前後の花冷えが適している。
<ペアリングについて>
しっかりとした味わいの為、酒盗やイカの塩辛などのアテと良く合う。
また、マスタードと相性が良い。
味わいにコクがある分、オリーブなどの特定の食材と合わせると苦味が強調されてしまう場合があるので注意する。
<具体的なペアリング>
・生ハムとはっさくのサラダ~マスタードドレッシング~
…柑橘のはっさくを使用したサラダとのペアリング。
ドレッシングは粒マスタード、オリーブオイル、ホワイトバルサミコ酢、砂糖、塩、胡椒を混ぜ合わせる。
サニーレタス、下茹でしたアスパラガス、皮をむいたはっさく、生ハムを器に盛り、ドレッシングをかけて完成。
柑橘の酸味と日本酒が同調し、爽やかで香り豊かなペアリング。
・イチゴのカプレーゼ
…イチゴは酸味と甘みのバランスが良いものがおすすめ。
イチゴを4等分にし、塩を振り、少し時間をおいて離水させる。
水分が出てきたら、オリーブオイルと合わせる。
器にブラッターチーズと和えたイチゴを盛り、バジルも添える。
仕上げにオリーブオイルと胡椒をかけて完成。
料理が引き立つ、華やかなペアリング。
・山菜の天ぷら
…食材はタケノコ、フキノトウ、タラの芽がおすすめ。
また、天つゆではなく塩をつけて食べると相性が良い。
短い期間しか出回ることがない旬の山菜の独特な香りと味わいがこの日本酒と相性が良く、特別感のあるペアリング。
笑四季のモンスーンは他にも様々な酒米品種で醸され、シリーズとなっているのでそちらについても是非調べてみていただきたい。
<商品説明>
商品名:笑四季 貴醸酒 モンスーン 山田錦
製造者:笑四季酒造株式会社(滋賀)
分類:生もと貴醸酒
原材料名:米、米こうじ、清酒
原料米:滋賀県産山田錦
精米歩合:50%
アルコール度数:17度
参考価格:720㎖ 2,750円(税込)
料理人/唎酒師ライター 内藤紫
19日配信 今回ご紹介するペアリング食材は、菜の花。
菜の花は早春に旬を迎えるアブラナ科の植物で菜種油や鑑賞用など、用途別でそれぞれ品種が存在する。
食用の菜の花は免疫力を高めるカロテンやビタミンc、食物繊維などの栄養価が豊富だが一度に食べ過ぎると腹痛を起こしやすいので注意が必要。
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そんな菜の花を今回は次のような調理方法とペアリングでご紹介する。
・ハマグリと菜の花のお吸い物 × 天明 純米吟醸 本生(福島)
…3月3日の上巳の節句(桃の節句)でも、良縁を招くとされ食するハマグリ。
菜の花との相性も良く、季節を感じる一品。
作り方はシンプルで、ハマグリを煮切り酒と昆布出汁と一緒に火にかけ、 ハマグリがひらいたら下茹でした菜の花と合わせて塩、薄口醤油で味を調え完成。
あわせる日本酒は福島県の「天明 純米吟醸 本生」。通称「みどりの天明」。
香り:メロン、リンゴ、生米のような香りが優しく広がる。
味わい:口当たりはさらりとしており、米の旨みを感じつつ、甘味と酸味が広がる。
バランスのとれた味わい。
薫酒(香りの高いタイプ)に該当。
こちらの曙酒造は全ての商品が特約店限定商品。
菜の花のほろ苦さとこの日本酒の香りがとても相性の良いペアリング。
5℃前後の雪冷えで合わせてほしい。
・タケノコと菜の花の混ぜご飯 × 月の桂 純米吟醸酒(京都)
…下茹でしたタケノコと菜の花を太白胡麻油と塩で炒める。
合わせ出汁で炊いたご飯に炒めた具材を混ぜ合わせ、いりごま、塩、薄口醬油で味を調えて完成。
あわせる日本酒は京都府の「月の桂 純米吟醸酒」。
香り:マスカットや青りんご、イチゴのようなフルーツの香りと炊いた米のような香り。
味わい:口当たりは滑らかで、上品な味わい。
爽酒(軽快でなめらかなタイプ)に該当。
京都で1675年から続く歴史ある酒蔵の定番商品。
爽やかで、春の訪れを感じるペアリング。
10℃前後の花冷えで、木製のおちょこで合わせてほしい。
・ホタルイカと菜の花のアンチョビ和え × 出羽桜 三年熟成大古酒 枯山水(山形)
…アンチョビペーストとリンゴ酢、上白糖、塩、オリーブオイルを混ぜ合わせておく。
下処理したホタルイカと下茹でした菜の花を先ほどのアンチョビソースと合わせ、味を調えて完成。
あわせる日本酒は山形県の「出羽桜 三年熟成大古酒 枯山水」。
外観:やや黄色がかっている。
香り:アーモンドやドライフルーツのような香りと玄米のような香りが感じられる。
味わい:口当たりはまろやかで複雑でありながら、包み込むような優しい味わい。
熟酒(熟成タイプ)に該当。
「お燗で美味しい日本酒」を目指し醸されたお酒。
アンチョビとホタルイカのコクのある味わいがより引き立つペアリング。
40℃前後のぬる燗で合わせてほしい。
春の訪れを感じる食材、菜の花。
他にもさまざまなペアリングにチャレンジしてみてほしい。
<ご紹介した日本酒の商品情報>
・天明 純米吟醸 本生
製造者:曙酒造合資会社(福島)
分類:純米吟醸酒
原材料名:米、米こうじ
原料米:山田錦
精米歩合:麹米50% 掛米55%
アルコール度数:16度
日本酒度:+2.0
酸度:1,8
参考価格:1800㎖ 3,604円(税込)
720㎖ 1,854円(税込)
・月の桂 純米吟醸酒
製造者:株式会社増田徳兵衛商店(京都)
分類:純米吟醸酒
原材料名:米、米こうじ
精米歩合:55%
アルコール度数:16度
参考価格:1800㎖ 3,520円(税込)
720㎖ 1,760円(税込)
・出羽桜 三年熟成大古酒 枯山水
製造者:出羽桜酒造株式会社(山形)
分類:特別本醸造
原材料名:米、米こうじ、醸造アルコール
精米歩合:55%
アルコール度数:15度
参考価格:1800㎖ 3,630円(税込)
720㎖ 1,815円(税込)
料理人/唎酒師ライター 内藤紫
12日配信 注目度が高まる高知県の郷土酒「土佐酒」
高知県で造られている日本酒は別称「土佐酒」と呼ばれています。
土佐酒を醸造する酒蔵は東西各所に点々とあり、西は四万十市にある「藤娘酒造」、東には田野町を拠点に代表銘柄「美丈夫」を醸造されている「濱川商店」と現在19蔵があります。
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また、高知県の日本酒造りは高い評価を得ており、ハワイで昨年10月頃に開催された「全米日本酒鑑評会」では、土佐酒が上位の金賞受賞数と受賞率で全国一位となりました。
そこで今回は土佐酒に関する特徴や文化、土佐酒を楽しむお座敷遊びなど、土佐酒の魅力について解説していきます。
【土佐酒の特徴】
土佐酒は全国でも随一の辛口テイストで酸味がしっかりあり、飲み応え十分。雑味が少なく綺麗な後味も魅力です。
酒米や酵母といった原材料に、高知県産が豊富なのも特徴のひとつなので詳しく解説していきます。
・酒米:高知県独自開発として今までに土佐錦・吟の夢・風鳴子が誕生しています。
・酵母:高知県産酵母は大きく2種類の性質があります。
1、バナナ系(A-14、AA-41、AC-17)
主に酢酸イソアミルを生産する酵母であり、バナナやメロンのような濃醇な甘さのある香りをお酒に付与してくれます。
2、リンゴ系(CEL-19、CEL-24、CEL-11)
主にカプロン酸エチルを生産する酵母であり、リンゴやパイナップルといった甘酸っぱい香りを付与してくれます。冷やして飲むことで爽やかな酸味も体感でき、先駆けとなったのが「亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24」です。
【土佐(高知県)の酒文化について】
・食文化との繋がりv 鰹をはじめ、高知県産の食材を美味しく引き立てるために、淡麗辛口の土佐酒が誕生としたと言われており、豊かな食文化から高知県民の多くが食中酒として重宝していることもまた事実。そこで高知県の食文化について解説していきます。
高知県は四国南部に位置し、豊かな自然に恵まれた土地柄から、海・山の幸と両方を活かした独自の食文化が発展してきました。
海の幸:代表的なのは鰹のタタキです。藁焼きで表面をこんがりと炙り、中はレアで仕上げ、ニンニクやミョウガ、ネギといった薬味をたっぷりとのせて食べられています。
ほかには脂がのった清水サバから、どろめや酒盗といった珍味も有名です。
山の幸:四万十川や安田川で獲れる鮎を使った塩焼きや、四方竹やぜんまいといった山菜を活かした炒め物や寿司などが挙げられます。
・お座敷遊びと土佐酒
高知県には、宴席で行われる伝統的なお座敷遊びが数多くあります。
これは土佐酒との関わりも深く、シチュエーションに合わせたお座敷遊びをしながら、お酒を酌み交わし郷土料理を味わうという楽しみがあります。
代表的なお座敷遊びをいくつか解説しますので、ぜひ体験してみてください!
1:可杯(べくはい)
可杯とは杯の台座部が尖って置けない杯や、底に穴が開いており指で塞がないとこぼれてしまう杯など、下に置くことができない杯のことです。
この遊びでは「三面杯」と呼ばれるものを使い、お酒の入る量が異なり、少量しか入らず置くことができる杯があれば、大容量で飲み終わるまで置けない杯があり、駒を回して止まった絵柄の杯で土佐酒を楽しむという遊びです。
2:菊の花
お盆に人数分の盃を伏せて置き、一人ずつその盃を取っていき、菊の花が入っている盃を開けた人は、それまでに空いている盃分、土佐酒を飲み楽しむという遊びです。
コチラは人数が多いほど盛り上がります
【土佐酒の魅力発信について】
高知県酒造組合を主体に、高知県は様々な形で土佐酒の魅力を発信し続けています。
・宇宙深海酒
2005年に開発を始め、まずは宇宙空間で10日間の培養に成功し宇宙酵母が誕生。その後、2021年に水深6,225mの深海に沈め、600気圧もの水圧に4ヶ月間耐えて培養に成功した酵母で造られたのが宇宙深海酒です。
2023年度に宇宙深海酵母を使った日本酒が初登場し、現在では11酒蔵から約15種類の宇宙酒・宇宙深海酒・深海酒がリリースされています。
香味特性としては、爽やかな香りがあり通常の土佐酒よりフルーティーな味わい。加えて多重な酸味や旨味が感じられます。
・土佐酒アドバイザー
高知県酒造組合が主体となり、土佐酒の文化や日本酒に関する知識を学び、土佐酒の魅力を多方面に発信する有識者を輩出する「土佐酒アドバイザー」という資格があります。
こちらは高知県内でも有名な資格として知られ、昨年21期生が卒業を迎えました。
【土佐酒の今後について】
今回は高知県の郷土酒「土佐酒」についてご紹介しました。
全体的に口あたり軽快で爽やかな酸感があり、サラッと流れる淡麗辛口テイストなので、魚や肉料理などジャンル問わずに合う万能的な食中酒といえます。
そして昨年には土佐酒が国内外16のコンテストで103個のメダルを獲得。合わせて日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことが後押しとなり、日本酒はもとより土佐酒も今以上に注目されることでしょう。
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
5日配信 「今週の注目の一本」爽やかな香味と柔らかい甘さが心地よい愛媛県の地酒「特別純米酒 叶川」
愛媛県では現在35蔵が日本酒造りに励まれています。
今回ご紹介するのは愛媛県にて100年以上の歴史を誇り、全体的に上質な旨味と雑味の無い綺麗なテクスチャーが楽しめる日本酒を造られている「養老酒造」より、淡麗甘口タイプの「特別純米酒 叶川」をご紹介していきます。
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【特徴】
1.原材料
酒米に松山三井、酵母はEK-1と共に愛媛県産の原材料を用いて造られています。
2.叶川の由来
銘柄名である「叶川」の由来について簡潔に記載しておきますので、ぜひ提供時に一言添えてみてください。
「養老酒造の地元である大洲市肱川町には『鹿野川(かのがわ)』が流れています。そして杜氏や蔵人の『飲む人の願いが叶いますように』という想いを込めて『叶川』と名付けられたそうです。」
3.香味
全体的に上質な旨味と雑味の無い綺麗な口あたりが特徴にあり、まるで白ワインのようなテイストです。
香りはグラスに注いだ後の立ち香や含み香ともに、フレッシュなリンゴや桃を彷彿させる爽やかな果実感が感じられます。
味わいに関しては、スッと喉を流れるようなドライ感ありながら、日本酒度は−6に設定されているので、口の中でジワーっと広がる甘味や旨味の奥深さも体感できます。
【温度と酒器】
・温度:涼冷え〜常温(15〜20℃)
・酒器:口が細まったワイングラスであれば、爽やかな果実感とスッキリとしたテクスチャーを十分に体感することができます。
【ペアリング】
2月はカリフラワーや菜の花、鰆などが美味しい季節でもあります。そこで旬食材を活かしたペアリングレシピをご紹介します。
・カリフラワーとシーフードのクリームグラタン
柔らかい食感に仕上げたカリフラワーとホワイトソースのまろやかなコクが相まった一品。エビやイカなどのプリッとした食感をプラスすることで、より美味しさが引き立ちます。
冷やした「特別純米酒 叶川」と合わせれば、クリーミーさと淡麗な甘さが相乗しつつ、後味は綺麗に流してくれるため、好相性なペアリングが期待できます。
・鰆の酒蒸し 香味野菜ポン酢添え
酒蒸しで身がふっくらとした鰆に、刻んだ生姜やネギを和えたポン酢は好相性。
「特別純米酒 叶川」が淡麗甘口テイストなので、料理の魅力を軽減することは無くペアリング的にも◎
ほかには、オイル系のパスタや魚のムニエル、桃とモッツァレラチーズのカプレーゼなども好相性ですよ。
【まとめ】
今回は愛媛県の養老酒造から発売されている「特別純米酒 叶川」をご紹介しました。
清流をイメージした端麗なラベルデザインと同調するように、綺麗な飲み心地でやや甘口&後味淡麗なので、日本酒への馴染みが薄い人でも飲みやすい一本です。
ペアリングもほぼジャンル問わず合わせやすいので、ぜひ季節食材を使った料理と共にご提案してみてください。
【日本酒情報】
・日本酒名:特別純米酒 叶川
・酒蔵:養老酒造
・種類:特別純米酒
・精米歩合:60%
・アルコール度:15度
・日本酒度:-6
・販売価格:1,760円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
2025年1月 |
29日配信 Z世代酒匠がおすすめする「今週の注目の一本」は飛囀 鵆 CHIDORI/飛良泉本舗(秋田)です。
創業500年を超える東北最古の酒蔵の、新世代蔵元が手がける挑戦酒シリーズ「飛囀」。
山廃×貴醸酒×No.77酵母という珍しいスペックを掛け合わせた一本で、普段とは一味違う味わいを求める甘口好きにおすすめです。
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商品名:飛囀 鵆 CHIDORI
酒蔵名:飛良泉本舗(秋田県にかほ市) 精米歩合:50%
原料米:秋田酒こまち
アルコール度数:13度
参考価格(税込):2200円(720ml)
その他:大量のリンゴ酸を出すきょうかい酵母No77を使用。
★飛囀シリーズ
500年以上の歴史を誇る老舗蔵元の27代目が始めた新シリーズ。
飛囀(ひてん)という名称には、幼い雛が大空を「飛」び、「囀」るようになるまで成長する姿を酒造りと重ね合わせて付けたそうです。
これまでに雛(ひな)や鵠(はくちょう)、鸐(やまどり)、鸙(ひばり)、䴏(つばめ)など鳥の名前がついた商品をリリースしています。
飛良泉の伝統である山廃酛での仕込みを大切にしながらも、酸に振り切った味わいや酵母違いで仕込む等、新世代の山廃像にも果敢に挑戦しています。
★香りと味わいの特徴
外観はごく淡い黄色。
リンゴやミカンをかじった時のような、凝縮された果汁を思わせる甘酸っぱさが口いっぱいに広がります。中間から後半にかけては次第にコクが増していき、山廃らしいしっかりとした骨格が感じられます。
-36と日本酒度で見れば極甘口なものの、刺激性が高い爽やかな酸味が特徴のリンゴ酸を多く生み出す酵母を使用しており酸度が3.2と平均の倍以上あるため、甘ったるさは全くなく爽やかな甘味と酸味が高濃度で調和した味わいに仕上がっています。
★おすすめの楽しみ方
<温度帯>
冷やでは上述のようにリンゴ酸由来の爽やかな甘酸っぱさが感じられ、若々しくフレッシュな印象。一方、燗にすると酸味にまろやかさと膨らみが感じられ、包み込まれるようなおおらかな味わいに変化します。
<酒器>
幅広い温度帯で楽しめる味わいのため、特に適した形や材質があるというよりは、グラスや猪口、ぐい呑み、平盃など様々な酒器で提供が可能です。
<料理>
他の日本酒ではなかなか見られない、凝縮された甘酸っぱさという特徴を最大限引き出すには、おかずに合わせる食中酒としてよりはチョコレートやドライフルーツを使ったケーキ等と一緒にデザートとしての提供がおすすめ。
ただし、燗にした場合は酸味がまろやかになり、落ち着いた深みのある味わいになるため、例えば豚の角煮や酢豚といった濃厚な味わいのおかずと合わせやすいでしょう。
Z世代酒匠ライター kanane_sake

こちらの菊姫合資会社は石川県で創業以来、米の旨みを生かした清酒本来の味を追求し日本酒を醸している。
今回はそんな酒蔵から、長期熟成にも耐える最高級米「特A地区 山田錦」を使用した熟成酒をご紹介する。
<テイスティングコメント>
外観:綺麗な琥珀色。
香り:干しブドウやシイタケ、ゴボウ、ウーロン茶、玄米などのような多彩な香りを強く感じる。
味わい:まろやかな口当たりで、干しブドウやオークなど複雑な香りを楽しめる。
凝縮感があり、濃厚な味わいだが、上品。
余韻にはカラメルやカカオのような心地よい苦味を感じる。
濃醇旨口。
熟酒(熟成タイプ)に該当。
提供温度は10℃前後の花冷えまたは50℃前後の熱燗が適している。
<ペアリングについて>
複雑な味わいの為、煮込み料理と相性が良い。
また、日本酒の香ばしさが温かいスイーツと良く合う。
バランスが良い為、比較的様々な料理と合わせやすい。
<具体的なペアリング>
・寒鯖のしめさば
…冬に旬を迎える鯖とのペアリング。
鮮度の良い鯖を三枚おろしにし、骨を取り除く。塩を両面にまんべんなく振り、冷蔵庫で1時間おく。
全体を水でさっと洗い、水気をふき取り、米酢に15分漬け込み完成。
日本酒の複雑さと鯖の甘みが引き立つペアリング。
10℃前後の花冷えで合わせてほしい。
・牛すじ煮込み
…牛すじは一度水で下茹でを行う。
その後、酒、昆布だしと共に2時間ほど弱火で炊く。
一口大に切った大根と人参も加えたら上白糖、煮切みりん、濃口醤油で味を整える。
牛すじからあふれ出す旨みと日本酒のコクが同調し、後引く味わい。
10℃前後の花冷えで合わせてほしい。
・フォンダンショコラ
…この日本酒にはカカオ65%のややビターな味わいがおすすめ。
中のガナッシュと外側の生地を別々で作るのが一般的だが、今回は簡単に作ることが出来るレシピでペアリング。 無塩バターとチョコレートを湯煎にかけて溶かし、卵黄2個、メレンゲにした卵白1個分、加熱した生クリーム、グラニュー糖、薄力粉を入れ合わせる。最後にコアントローを数滴入れ、型に流し180℃の余熱したオーブンで8分ほど様子を見ながら焼けば完成。
チョコレートのややビターで濃厚なコクとコアントローのほのかな香りが日本酒と合わせるとより引き立つ。
バレンタインの日にもぴったりな一品。
50℃前後の熱燗で合わせてほしい。
8年かけてじっくりねかせた、洗練された複雑な味わいの日本酒。
是非、旬の食材とのペアリングも試していただきたい。
<商品説明>
商品名:菊姫 純米速醸仕込 28BY
製造者:菊姫合資会社(石川)
原材料名:米、米こうじ
原料米:兵庫県三木市吉川町(特A地区)産山田錦100%
精米歩合:65%
アルコール度数:15度
参考価格:720㎖ 1,925円(税込)
1800㎖ 3,850円(税込)
料理人/唎酒師ライター 内藤紫

タラの旬は12月~3月ごろの寒い時期で、スケトウダラやコマイなど多くの種類がありますが今回はマダラ(真鱈)をご紹介します。
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タラは身の部分がややピンク色がかっているものが鮮度の良いものです。
さらに、白子は白く透明感のあるものが新鮮なもの。
また、独特の生臭い香りがある為、湯引きなどの下処理をしっかりと行ことをおすすめします。
タラの栄養価は他の魚と比べても、脂質が少なくタンパク質の多い食材で、貧血予防に効果的なビタミン12も豊富に含まれています。
そんなタラを今回は次のような調理方法とペアリングでご紹介します。
・タラと白子の茶わん蒸し × 伯楽星 純米大吟醸(宮城)
…茶わん蒸しの地は溶き卵、合わせ出汁、塩、薄口醤油を合わせ、裏ごしをします。
タラの切り身と白子は一口大に切り、塩を振ったら先に蒸して火を通します。
火が通ったら裏ごしした茶わん蒸しの地を入れ、中火で火を入れ固めます。
仕上げに味付けした合わせ出汁の餡を上にかけ、三つ葉を乗せて完成です。
あわせる日本酒は宮城県の「伯楽星 純米大吟醸」。
マスカットのような爽やかな香りが穏やかに感じ、スッキリとキレのある後味が心地よい味わいです。
究極の食中酒を目指し、あえて香りを抑えるように醸された日本酒で国際線のファーストクラスでも提供されています。
伯楽星の香りとキレが、タラのサッパリとした味わいと白子のコクに良く合います。
切子のおちょこで5℃前後の雪冷えで合わせてほしい、上品なペアリングです。
・タラの竜田揚げ~タルタルソース添え~ × 獺祭 純米大吟醸 磨き45(山口)
…タラは一口大に切り軽く塩を振り水分をふき取ります。
酒、濃口醤油、上白糖、みりんを合わせた地に15分ほど漬け込み、水分をふき取り片栗粉をまぶして揚げます。
あわせる日本酒は山口の「獺祭 純米大吟醸 磨き45」。
りんごの蜜やバナナのようなフルーツの華やかな香りが爽快な味わいです。
旭酒造のスタンダード酒で獺祭の果実の味わいがタラの旨みを引き出し、タルタルソースが良いアクセントとなるペアリングです。
10℃前後の花冷えで合わせてみて下さい。
・タラチゲ鍋 × 飛露喜 特別純米(福島)
…具材には殻付きのアサリを使用し、魚介の味わいを強く出すのがポイント。
にんにくとおろししょうがをサラダ油で炒め、ブイヨンとコチュジャンを入れます。
具材はタラ、殻付きアサリ、キムチ、白菜、豆腐、その他好きなものを入れ、
しっかりと煮込めば完成です。
あわせる日本酒は福島県の「飛露喜 特別純米」。
バナナのような香りが穏やかに広がり、米の旨みをスッキリと感じます。
人気が高く、入手困難なプレミア酒となった飛露喜の定番酒。
チゲ鍋の魚介のコクがより引き立つペアリングとなっています。
10℃前後の涼冷えで合わせてみて下さい。
種類が豊富で身近な食材である、タラ。
他にもさまざまなタラの調理とペアリングにチャレンジしてみて下さい。
<ご紹介した日本酒の商品情報>
・伯楽星 純米大吟醸
製造者:新澤醸造店(宮城)
分類:純米大吟醸酒
原材料名:米、米こうじ
精米歩合:40%
アルコール度数:15度
酸度:1,6度
日本酒度:+5
アミノ酸:1,1
参考価格:1800㎖ 5,390円(税込)
720㎖ 2,750円(税込)
・獺祭 純米大吟醸 磨き45
製造者:旭酒造株式会社(山口)
分類:純米大吟醸酒
原材料名:米、米こうじ
使用米:山田錦
精米歩合:45%
アルコール度数:15度
参考価格:1800㎖ 4,367円(税込)
720㎖ 2,183円(税込)
180㎖ 545円(税込)
・飛露喜 特別純米
製造者:株式会社廣木酒造本店(福島)
分類:特別純米酒
精米歩合:55%
アルコール度数:16度
参考価格:1800㎖ 3,190円(税込)
料理人/唎酒師ライター 内藤紫
8日配信 日本酒ビギナーにオススメな土佐酒「亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24」
今回ご紹介するのは、高知県の酒蔵「亀泉酒造」にて醸造されている超甘口な純米吟醸生原酒です。
淡麗辛口文化が強い高知県の日本酒(通称:土佐酒)ですが、紹介する日本酒は「フルーティーさがあり、白ワインに近しい感じで飲みやすい」と根強い人気があります。
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【特徴】 まずは気になる香りや味について。
香りは青リンゴやパイナップルを彷彿させる華やかな果実感が堪能でき、飲んだ瞬間はジューシーな甘酸っぱさが体感できます。
そこからサラッとキレる爽やかな酸感のおかげで、口の中に甘さが残りすぎないので飲み心地も快適!
また、アルコール度数14度の低アルということも含めて、毎年冬の発売時には注文が殺到するほどの人気銘柄です。
ここまで注目を集めるほど上質な香味に仕上がっている理由として、重要なポイントが2つあります。
1.酵母
高知県工業技術センターで開発された高知県産酵母「CEL-24」は、華やかな香りと青リンゴのような甘酸っぱさをお酒にもたらしてくれる特性があります。結果的に今回の紹介酒は高知県の日本酒では珍しい超甘口タイプに仕上がっています。
2.日本酒度
基本的には醸造された際、銘柄ごとで数値は決まっているものだと思います。
しかし、「亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24」は仕込みごとで日本酒度が変化するという特徴があります。度合いはー8~ー16のなかで変化しているとのこと。
この2つの要素を提供時に説明することで、飲み手の感じ方もまた変わってくるはずです。
【酒器】
ワイングラスが推奨ですが、なかでもオススメは「キャンティグラス」です。縦長で口をつける部分がすぼまっているグラスのことを指し、通常の酒器よりも口あたりや香り高さがより強く体感することができます。
【ペアリング】
1月になれば水菜やキャベツ、ぶりなどの食材が旬を迎えます。季節的に寒くなる日が続きますので、体が温まる料理からオススメのペアリングをご紹介します。
ブリしゃぶ:昆布だしが効いたお鍋にくぐらせたブリの優しい甘みと紹介酒の爽やかな甘みが相乗反応を生むので相性良好。また、食べ終わりの余分な脂をサラッと流してくれるのも◎
・カニ料理:しゃぶしゃぶや焼きで調理したカニの良い香りと同調し、凝縮された旨味や甘味を遮らない食中酒として活きてきます。
ほかにもバター焼きやグラタンなどのアレンジメニューも豊富ですので、色々と試してみてください。
【まとめ】
今回は高知県の酒蔵「亀泉酒造」より、超甘口な純米吟醸酒より『亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24』をご紹介しました。
爽やかな酸味とほのかな甘味の絶妙なバランス感にフレッシュな果実系の香りが楽しめる土佐酒に仕上がっているので、女性や日本酒ビギナーでも十分に飲み楽しむことができます。
日本酒の注文で悩まれているお客様には是非、食前や食中酒などで提案してみてください。
【日本酒情報】
日本酒名:亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24
酒蔵:亀泉酒造
種類:純米吟醸酒
アルコール度:14度
日本酒度:-11
精米歩合: 50%
価格:税込1,876円(720ml)、3,751円(1800ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
新潟の豊かな自然に囲まれた酒蔵が、森で採れた和のハーブ・クロモジを使って醸したクラフトサケ。爽やかさと重厚感を併せ持った特徴的な香りとビターな味わいは、和食だけでなくイタリアンやフレンチ、エスニック料理などジャンルを超えたペアリングにおすすめです。
▼開く★商品紹介
商品名:翔空 森のSAKE〜クロモジ澄み酒〜
酒蔵名:LAGOON BREWERY(新潟県新潟市)
精米歩合:70%
原材料:米(新潟県産五百万石100%使用)、米麹、クロモジ
アルコール度数:16度
参考価格(税込):2640円(720ml)
その他:清酒をベースに、副原料としてクロモジを使用。酒税法上の分類では「清酒」ではなく「その他醸造酒」に分類される、いわゆる「クラフトサケ」と呼ばれるジャンルです。
★クロモジとは
クロモジは日本原産のクスノキ科の低木で、落ち着いたウッド調の香りの中に甘さのあるフローラルな香りも含んだ芳香が特徴です。
新潟県・栃尾地区の森で採取したクロモジの枝を細かく裁断し、米と一緒に醪の中で発酵させることにより、クロモジ独特の香りを纏わせたお酒になっています。
酒蔵の方針として、自然栽培や有機栽培など環境にやさしい方法で作られた米を積極的に使用する他、輸送による環境負荷を減らすために半径20km圏内で取れた米のみを原料米とすることを目指しているそうです。このような蔵独自のこだわりを提供の際にお伝えすることでお酒の背景まで感じながらお楽しみいただけるでしょう。
★香りと味わいの特徴
ロゼワインのような、透き通った淡いピンク色の外観はクロモジの特性によるもの。
爽やかなハーブの香りが漂い、口に含むと新緑のような瑞々しさはありながらも派手になりすぎない、落ち着いたクロモジの香りと苦味が鼻に抜けていきます。
甘味はほとんど感じず、ハーブの爽やかさや重厚感を演出することに振り切ったビターな味わい。長すぎず短すぎない絶妙な余韻が舌に残る、最初から最後まで一貫してクロモジの存在感を全面に出した個性的なお酒です。
★おすすめの楽しみ方
<温度帯>
冷やした状態では爽やかさやスパイシーさなどハーブ感を存分に楽しむことができるとともに、締まったクリアな苦味が感じられます。
少し温度が上がってくるとふくらみのある米の旨味が感じやすくなり、より重層的な味わいへと変化します。
<酒器>
淡いピンク色の外観を楽しむには、透明のグラスや内側が白い酒器が向いています。温度変化による味わいの違いを楽しめるよう、少し大きめの酒器での提供がおすすめです。
<料理>
個性的な香りはカプレーゼやカルパッチョといったハーブを使った前菜や、鶏もも肉や白身魚の香草焼きと相性抜群です。パッタイやガパオライス、フォーなどのエスニック料理とも香りや味わいが同調し好相性でしょう。
Z世代酒匠ライター kanane_sake