2025年4月 |
23日配信 希少米で醸した香味バランス優秀な純米酒「二兎 純米 萬歳七十」
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今回は愛知県を拠点に代表銘柄「二兎」を造られている「丸石醸造株式会社」より、地元で育てられた希少なお米を用いて二兎の本質もたっぷり堪能できる純米酒「二兎 純米 萬歳七十」についてご紹介していきます。
オススメの飲み方やペアリングなども合わせて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【特徴】
1.長い眠りから蘇った希少米「萬斎」
今回の紹介酒を醸造されている丸石醸造がある愛知県岡崎市で栽培されている飯米「萬歳」。
この萬歳は大正時代、天皇即位の際に行われていた「大嘗祭」にて、五穀豊穣と国の安寧を祈願する儀式で奉納されていたとされる由緒ある品種です。
一時期は途絶えていたそうですが、約100年ぶりにたった10gの種籾から地元農家の手で復活させることに成功したそうです。
特徴として心白が大きいため酒造りに最適。心地よい甘味と酸味を含んだ酒質になるそうで、酒米として名高い「雄町」にも負けない優れた特性を持っています。
2.香味
香りはグラスに注ぐと、レモンやグレープフルーツのような瑞々しい甘さのある香りがふわっと感じられます。
口に含むとトロッと滑らかな口あたりから入り、コクのある旨味とじわっと広がっていく甘みが感じられます。加えて軽やかな酸感とほのかな苦味も共存しており、複雑味も兼ね備えております。
飲み終わりにかけては二兎の本質である甘味から辛味への流れ変わりに、ガス感も絡みキレの良さも抜群です。
【適正温度】
酒蔵推奨の適正温度は冷酒~常温。ただ個人的にぬる燗もオススメです。
約40℃ぐらいまで温めてみたところ、冷酒と比べて甘さがより鮮明に感じられ、酸味は少し抑えめに。燗酒ならではの良さが顕著に表れており、旨味も十分に堪能できますので、お客様の好みに合わせて提案してみてください。
【ペアリング】
今回の紹介酒は五味(甘味・辛味・苦味・渋味・旨味)のバランスが綺麗に取れた純米生酒なので、旨味や濃度がしっかりとした手羽先の唐揚げや魚の干物などが合わせやすいでしょう。
そこで旬の食材を取り入れた、味わい濃厚なオススメペアリングを2品ご紹介します。
・カレイと牛蒡の煮付け
酒・醤油・みりんなどで甘辛く煮付けたカレイと牛蒡は旨味もたっぷりと含んでおり、冷酒と燗酒どちらでも好相性。
・新じゃがの味噌グリル
4月下旬から5月にかけて旬を迎える新じゃがを使った一品。味噌を基調に砂糖や醤油、酒を合わせた甘辛い味噌だれをまとった、ホクホクの新じゃがは冷酒とのペアリング度は満点です。
【まとめ】
今回は愛知県の丸石醸造で造られている日本酒「二兎 萬歳七十」をご紹介させていただきました。
全体的にバランスが綺麗な純米酒なので、温度別や様々なペアリングを通して美味しさを伝えられることでしょう。
【日本酒情報】
・日本酒名:二兎純米 萬歳七十 生酒
・種類:純米酒
・酒蔵:「丸石醸造株式会社」(愛知県)
・精米歩合:70%
・アルコール:16%
・価格:税込1,485円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
16日配信 Z世代酒匠がおすすめする「今週の注目の一本」は醸し人九平次 いのね 四つ星/株式会社萬乗醸造(愛知)です。
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200㎞離れた兵庫県に持つ自社田に毎年通い理想を追求した米作りを行う酒蔵が生み出す、米の品質にとことん拘った一本です。
上品な香り、滑らかな口当たり、繊細な甘味と渋味が口の中で調和し絶妙なバランスを保ちます。
余韻が残る最後の一瞬まで丁寧に味わいたい逸品です。
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商品紹介
・商品名:醸し人九平次 いのね 四つ星
・酒蔵名:株式会社萬乗醸造(愛知県名古屋市)
・精米歩合:非公開
・原料米:山田錦
・アルコール度数:16度
・参考価格(税込):5500円(720ml)
・その他:
諸説ある「稲」の語源のうちの一つとして、「命の根」という説に着目して名付けられた銘柄が今回取り上げる「いのね」です。
命を育む大切な存在である稲=米を重視した「いのね」シリーズには三つ星、四つ星、五つ星の3種類のラインナップがあります。
その違いは米のグレード。醸造用玄米は農林水産省の基準によって「特上、特等、1等、2等、3等、規格外」と分けられます。萬乗醸造では更に醸造適性を加味した独自の基準を使って、自社田の米を評価しています。
「いのね」シリーズに使われるのは特等以上、かつ独自基準で三つ星、四つ星、五つ星を取った米のみという贅沢な造りになっています。
蔵の特徴
「醸し人九平次」のブランドで知られる萬乗醸造は1647年、現在の愛知県名古屋市で創業しました。蔵元は代々「九平治」という名前を襲名し、現在の久野九平治氏が15代目にあたります。
萬乗醸造のこだわりは何と言っても山田錦の最大の産地である兵庫県に自社田を持ち、蔵人が米作りを行っていること。
米を育てる土地の個性(=テロワール)と天候の影響を受けた収穫年による個性(=ビンテージ)の2つをお酒の味わいを決める要素として重視し、「一粒が重い」理想の米を作れる土地を探して見つけ出したのが兵庫県黒田庄でした。
蔵人達は愛知県から約200km離れた黒田庄に毎年通い、理想を目指した米作りに励んでいるそうです。
香りと味わいの特徴
瑞々しい梨を思わせる穏やかな香りです。
口当たりは滑らかで全く角がなく、良い意味で澄み切った水のようになんの抵抗もなくすっとお腹の中に落ちていきます。
梨や白桃といった果物を思わせるジューシーな甘味と米の柔らかく丸みのある甘味が見事に調和し、後味に感じる少しの渋味が全体の印象を引き締めます。
何かひとつの香りや味わいが突出するということがなく、調和のとれたバランスの良い印象です。
おすすめの楽しみ方
<温度帯>
甘味は冷やしすぎると感じにくくなり、逆に温めすぎるとだれた印象になってしまうという特性があります。そのため、このお酒の特徴である繊細でエレガントな香りや甘味を味わうには、冷蔵庫から出して少し経った頃合いの温度(8~12℃)での提供が適しています。
<酒器>
ワイングラスや大吟醸用のグラスなど、口がすぼまっていて香りを感じやすい酒器がおすすめです。
<料理>
刺身や山菜の天ぷら、鶏の水炊きなど素材の味を感じられるシンプルな料理と好相性です。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
9日配信 日本酒フォトライターが解説! 簡単で綺麗に撮れる日本酒の撮影方法
酒販店での販売用や飲食店での提供用に入荷した日本酒を、SNSなどにアップするために撮影するものの、なんか綺麗に撮れないと思ったことはありませんか?
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実は撮影時の明るさや角度、小道具など少し工夫をすることで写真映りは綺麗になります。
そこで今回は様々な日本酒を撮影してきた「日本酒フォトライター」という視点から、初心者でも綺麗に撮影できるコツを解説していきます。
【光の位置】
撮影時に一番重要となるのが対象物を照らす「光」の位置です。前後左右、斜めなど対象物を照らす方向で写り方の綺麗さは変わります。
この光の位置をマスターできれば、スマホでも十分に綺麗な写真が撮影できますので、今回はオススメの角度を解説します。
・半逆光
撮影時に基本的かつ綺麗に撮れる光の角度は「半逆光」とされており、対象物の斜め後ろ45度から光を当てるイメージです。
効果としては被写体に立体感が演出でき、被写体の後ろも明るくなります。
・半順光
これは対象物に対して斜め前45度から光をあてるイメージです。
お酒を注いだグラスと料理を共に撮影する際、半逆光だと日本酒の瓶で無駄な陰影が付く場合がありますが、半順光であれば手前が明るくなるため、料理も鮮明に撮影できます。
ここで光を用いて撮影する際の重要なポイントがあります。
① 部屋の照明を消して自然光で撮影
部屋の電気を消して窓から差し込む自然光を駆使して撮影してみてください。全体的に柔らかい明るさに包まれ、程よい立体感が演出できます。
自然光が無い場合は、自作できる簡易ライトボックスがオススメです。
段ボールの底をくり抜き、トレーシングペーパーを底に貼り、中から懐中電灯を照らせば自然光同様の役割を担いますよ。
②光の反射
これは半逆光での撮影時に重要となります。
対象物の斜め後ろから光を照らすため、手前はどうしても少し暗くなります。通常、カメラマンは光を反射させる「レフ板」を使用して手前の影を無くし、日本酒と料理の複合撮影なども全体的に明るく撮影しています。
レフ板は自作もできますが、面倒なときはコピー用紙などの白紙でも代用可能です。
半逆光から光が差す方向に白紙を構え、光を屈折させて料理などにあてるイメージで白紙の角度を調整すれば、鮮明な写真を撮ることができます。
【撮影角度】
日本酒を撮影する際、ラベルの位置と並行になる高さから撮影することで瓶の形が歪むこと無く撮影できます。しかし瓶の色によって自分が映り込む場合があります。その際は以下の方法を試してみてください。
・2倍以上のズームにして離れて撮影
日本酒を自分の目に映る景色同様に撮影するなら、約1m~1.5mほど離れてのズーム撮影が適しています。またズームすることで歪み問題もより解消できますよ。
もし、完璧に写り込みを無くしたい場合には100円ショップなどで販売されている「スマホ用三脚スタンド」を用いてのタイマー撮影がオススメです。
【背景紙や小道具の使用】
季節感や日本酒のタイプに合わせて、背景や小道具などをプラスすれば一際目を惹く写真を撮ることができます。
・背景紙
手軽に試すなら100円ショップで販売されている厚紙や模様が描かれたボードでも十分です。また、手芸センターには布や和紙系など材質や色など種類豊富に揃っているうえ、意外とお手軽に購入できるのでオススメです。
・小道具
春酒なら桜の木、夏酒なら風鈴やすだれ、秋酒なら紅葉、冬酒なら綿を雪に見立てるなど、画角内にひとつ季節感のあるアイテムを入れるだけで、写真の出来栄えは大きく変わってきます。
こういった小道具も100円ショップで幅広く取り揃えられています。
【SNS掲載時の注意点】
みなさん綺麗に撮影した写真をSNSに掲載すること多いと思います。そのなかで酒類の掲載や宣伝時に注意しておくべきSNSが「Instagram」です。
規約内にて「アルコールは制限されているコンテンツであり、ブランドや酒蔵とのタイアップ投稿をする際は、年齢設定(20歳以上)が必要」とされています。
加えて通常の投稿時は「ハッシュタグ」にも要注意です。
投稿の文章内は注視されておりませんが、ハッシュタグに「日本酒」「お酒」「カクテル」などを付けると、規定違反として投稿が削除される場合があります。
解決方法として「日本酒が飲める居酒屋」「日本酒好き」「季節のお酒」などキーワードに付随した言葉を装飾して、文章化したハッシュタグであれば投稿可能となります。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
今回解説したポイントを徐々にでも良いので取り入れながら、素敵な日本酒フォトを撮影してみてくださいね。
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
2日配信 燗酒にして料理と共に堪能したくなる土佐酒「美丈夫 特別本醸造」
今回は代表銘柄「美丈夫」を造られている、高知県の酒蔵「濱川商店」から「美丈夫 特別本醸造」についてご紹介します。
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オススメの飲み方やペアリングなども合わせて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
【特徴】
① 提案できる温度帯の幅が広い
今回の紹介酒は「燗にして旨い食中酒」というコンセプトがあります。
まず40~45℃ぐらいでつけたぬる燗の場合、全体的に味のまとまりがありつつも奥深いコクと余韻がしっかりと体感できます。甘みも程よく感じられるなかでキレの良さはしっかりと残るのも特徴的。
冷酒の場合は約5℃の雪冷えがオススメ。軽快な喉越し感と口中をリフレッシュしてくれる爽やかな酸味が相まって、飲み疲れせずに呑み楽しむことができます。
② 精米
酒米は愛媛県産の「松山三井」を起用しており、吟醸酒規格とされる60%まで精米されております。そのため吟醸酒のようなサラッとしたテイストが酒質に加わっています。
③ 香味
香りはほんのりとフルーティーさが感じられ、口に含むと味の膨らみ・力強さ・鋭いキレ感が印象的な味わいとなっています。
【オススメの酒器】
・冷酒:スッと流れる喉越し感を楽しんでいただきたいので、フルートやボルドーといった、細長いタイプのワイングラスを推奨します。
・燗酒:陶器製の猪口やぐい呑みであれば、膨らむ香りや旨味を十分に堪能することができるでしょう。
【ペアリング】
徐々に春らしい季節となってくる4月には鰆やしらす、たけのこにそら豆などが旬を迎えます。そこで今回は春頃に一番美味しくなる食材を使ったペアリンググルメをご紹介します。
・青椒肉絲
タケノコ、牛肉、ピーマンと食感を楽しる具材を盛り込み、オイスターソースやコチュジャンなどで味付けした旨辛な一品は冷酒や燗酒ともに相性良好。
口中に残った油分はしっかりとリセットしてくれるので、ぜひ試してみてください。
・鰆の酒粕漬け
酒粕の香り高い風味を効かせ、ふっくらと焼きあげた鰆には燗酒を合わせてみてください。
「美丈夫 特別本醸造」のふくよかな旨味と鰆の旨味が同調し合うのでオススメですよ。
【まとめ】
今回は濱川商店で造られた「美丈夫 特別本醸造」の魅力や楽しみ方などについてご紹介させていただきました。
冷やから燗酒まで様々な温度帯で楽しむことができ、土佐酒らしいキレ感とふくよかな旨味も堪能できる高品質な香味感でありながら、リーズナブルな価格帯で手に入るのはかなり魅力的だと思います。
食中酒としても活躍すること間違いなしなので、お好みの合わせ方でぜひご提供してみてくださいね。
【日本酒情報】
・日本酒名:美丈夫 特別本醸造
・酒蔵:濱川商店(高知県田野町)
・種類:特別本醸造
・精米歩合:60%
・アルコール度:14度以上~15度未満
・販売価格:税込1,100円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
2025年3月 |
26日配信 ベトナムのクラフトサケ事情(後編)
「ベトナムのクラフトサケ事情(前編)」に続いて、今回もベトナム・ホーチミンのクラフトサケ醸造所”MUA Craft Sake”での体験をレポートします。
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醸造所併設のレストランで筆者が頼んだ4種類のお酒についてご紹介します。
初めに注文したのが3種類の飲み比べセット。それぞれのお酒に合う料理が書かれたカードが付いており、和食以外を念頭に置いた興味深いペアリングだったので一緒に紹介します。
①グァバと金柑/SAKE GUAVA KUMQUAT
①~③の飲み比べを注文した際に、こちらが最も軽い味わいなので初めに飲むように推奨されました。優しい甘さと独特な青っぽさが併存したグァバの味わいに柑橘の風味がプラスされています。
現地の方に聞いた話では、ベトナムでは完熟していない青さが残ったままのフルーツをよく食べるそうです。このお酒も完熟した南国フルーツの味わいというよりはまだ若い果物特有のフレッシュな味わいを上手く活かしており、完熟した果物の濃密な甘さを表現する日本のクラフトサケとは一味違う仕上がりになっていました。
PAIRS WITH(合う料理):Green Vegetables(緑野菜)、Mushrooms(マッシュルーム)、Pickles(ピクルス)、Hard Cheese(硬いチーズ)
②スパークリングマルベリー(桑の実)/SPARKILING MULBERRY WILD PEPPER
鮮やかな赤色に、まず目を惹かれます。ベリーのような味わいですが、酸味が少ない甘口のスパークリングサケです。一緒に注文した脂身の多い豚肉の粕漬けとは、脂身とお酒の甘味が絶妙に調和しつつも、口内で弾ける炭酸と後味にほんのりと感じるワイルドペッパー(日本の山椒に似たベトナムの香辛料)の清涼感のおかげで甘ったるくなりすぎることがなく、相性抜群でした。
PAIRS WITH(合う料理):Fresh Salads(新鮮なサラダ)、Raw Fish(刺身)、Oysters(牡蠣)
③CT25純米酒/CT25 PURE RICE SAKE
酒造りに通常使用されるジャポニカ米ではなく、パラパラとした食感が特徴のインディカ米で作った清酒です。注文の際に”Strong”と説明されましたが、日本で飲む清酒と比べると通常程度の味の濃さのように感じました。
米の旨味がしっかり乗った醇酒タイプの純米酒を思わせる味わいでした。
PAIRS WITH(合う料理):Read Meat(赤身肉)、Nuts(ナッツ)、Goat Cheese(山羊のチーズ)
次に、にごり酒を注文しました。
④Cloudy Nigori
見た目も味わいもにごり酒そのものですが、どこかパクチーを思わせる要素も感じられる面白い味わいでした。ほろ苦くやや癖のあるハーブの存在感がクリーミーなにごり酒の後ろに隠れているような印象です。
ペアリングの紹介では刺身や牡蠣など日本でもお馴染みのものから、ピクルスや山羊のチーズなどその組み合わせもあるのか!と驚かされるもの、また、熟酒と合わせることが多いナッツを醇酒に合わせて紹介するといった意外性があり、お国柄の違いを感じられる面白い経験となりました。
最後に、和食からヒントを得たという現地の創作ベトナム料理を二つ、ご紹介します。
一つ目はカツオならぬ牛肉のタタキ。薄くスライスした玉ねぎと、カボスに似た柑橘がトッピングされており醤油風のソースでいただきました。
二つ目は焼きブンチャー。ブンチャーとは、米粉でできた麺を酸味のきいたスープに入れて食べる料理でベトナムのつけ麺とも呼ばれます。これはブンチャーのアレンジとして、焼いて固めた麺を鶏肉と一緒に串に刺して、ソースに絡めながら食べるスタイルでした。
ご紹介したのはほんの一例に過ぎませんが、海外でクラフトサケや清酒がどのような料理と合わせて提供されているかイメージする手掛かりになれば幸いです。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
26日配信 ベトナムのクラフトサケ事情(前編)
「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界から日本酒へ熱い視線が向けられる今、海外でも酒造りが盛んになっています。
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昨年11月、ベトナムのクラフトサケ醸造所へ行ってきました。その名は”MUA Craft Sake” 。
「紀土」で知られる和歌山県の平和酒造、べトナムを代表するクラフトブリュワリーであるEast West Brewing、新鮮な地元の食材にこだわった料理を提供するレストランMùaの3社が提携して始めた醸造所です。
”Local”にこだわった酒造りを行っており、原料には日本で一般的な粘り気のあるジャポニカ米だけでなく、パラパラとした食感が特徴のインディカ米も使用します。特に、国際コメコンクールで最優秀賞に選ばれた実績のあるベトナム産のST25というインディカ米はパイナップルとアーモンドのような香りを与えてくれるそう。
水ももちろん、不純物を濾過したうえで現地のものを使用。そして副原料にはパッションフルーツやグァバ、マンゴー、パイナップルなど南国ならではの果物が使われています。
MUA Craft Sakeには併設のレストランがあり、和食にインスピレーションを受けた創作ベトナム料理と一緒にMUAのお酒を楽しむことができます。
今回と次回の2回に分けて、現地で撮った写真を交えながらその様子をレポートします。
MUA Craft Sakeはベトナム最大の都市・ホーチミンの中心部、各国の大使館が多く置かれている富裕層が多いエリアにあります。
ダークトーンを基調としたシックな外観と、ネオンで装飾された「MUA」「ムア酒造」「CRAFT SAKE」のポップな看板が印象的です。
お店を入るとまず、棚に美しくディスプレイされたお酒が出迎えてくれます。
店内は天井が高く広々とした開放的な空間。奥にはタップルームがあり、タップから直接お酒が注がれる様子はまるでクラフトビールの醸造所のようです。
早い時間帯だったので客はまばらでしたが、外国人観光客もちらほらといて全体的にカジュアルな雰囲気でした。
気になるドリンクメニューはこちら。
オリジナルのクラフトサケとしては、クラシック、グァバと金柑、パッションフルーツ、スパークリングマルベリー(桑の実)、にごり酒の5種類が用意されており、好きなお酒を3種類選んで飲み比べができるセットもあります。
インディカ米を使ったCT25シリーズはピュアライス、パイナップルチリ、柚子ドラゴンの3種類。そして、季節限定メニューとしてジャスミンと蜜柑、プラムの2種類があります。
お値段は120mlで95,000~150,000ベトナムドン(≒570~900円)。日本と比べるとやや高い価格設定です。
クラフトサケの他には平和酒造の「紀土」純米酒や「無量山」純米大吟醸酒がボトルで注文できるようになっており、クラフトビールやウイスキー、ハイボールなど他のアルコールの種類も豊富です。
面白かったのが、オリジナルのサケカクテル。パイナップルチリのクラフトサケに柚子ピューレ、ライムの葉、ジンジャエールをミックスした「Sakerita」や清酒にカンパリとスイートベルモット(ワインにハーブやスパイスの風味を付けたもの)を加えた「Pure Negroni」、清酒にライチ果汁とフルーツを入れる「White Sangria」などがありました。中でもベトナムらしいと感じたのは「”Ca Phe Sua” Nigori」。Ca Phe Suaとは練乳をたっぷり入れたベトナムコーヒーのことで、これににごり酒を加えたカクテルだそうです。注文しなかったのですが、果たしてどんな味なのか非常に気になります。お値段はいずれも150,000ベトナムドン(≒900円)でした。
筆者はこの中からCT25ピュアライス、グァバと金柑、スパークリングマルベリーの3種の飲み比べとにごり酒を注文しました。
次回はそれぞれの味わいや料理との相性について紹介します。
Z世代酒匠ライター kanane_sake
12日配信 宇宙と深海のロマンが詰まった「宇宙深海酒」の魅力を徹底解説!
皆さんは「宇宙深海酒」をご存知でしょうか?
こちらは高知県酒造組合などが取り組み、完成させたニュータイプの日本酒であり、簡潔に説明すると宇宙と深海の両方で培養に成功した酵母を用いて造られたお酒のことです。
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【宇宙深海酒誕生の経緯】
高知県酒造組合が「もっと全国の人に土佐酒を飲んでもらいたい」という想いから、2005年10月1日の「日本酒の日」に合わせて、宇宙深海酒造りのプロジェクトをスタートさせました。
最初は日本酒造りで重要な役目を担う「酵母」を宇宙ステーション内にて10日間滞在させます。宇宙空間は快適だったようで、1つも失われることなく培養に成功し、「宇宙酵母」が誕生。
続いて2019年に深海での培養に挑戦するものの、この時は高水圧と低水温に耐えきれず失敗に終わってしまいます。
そこで圧力に耐性をつけた酵母を育てあげ、2021年1月に再トライを試みます。
水深約6,000mの深海に4ヶ月間沈め、高水圧がかかる過酷な環境下のなか、なんと宇宙酵母5種と通常酵母6種が見事に耐え抜きました。
宇宙と深海の高低差が約406kmという長旅を経て、培養に成功した酵母を用いて造られたお酒が「宇宙深海酒」として、2021年12月22日に誕生しました。
【宇宙深海酒になれる条件】
先ほど誕生経緯についてご紹介しましたが、正式に「宇宙深海酒」とされるには条件があります。
宇宙を旅した種もみから増やした、高知県産の酒米「吟の夢」「風鳴子」のいずれかを用いて醸造する必要があります。
【特徴】
続いて香味特性やテクスチャー、ラベルなどについて解説していきます。
香り:少し爽やかさがありつつも複雑性も兼ねた香りがあります。
味:一般的な高知県の日本酒と比べると、やや熟成感が高くフルーティーさもあり、中盤から後半にかけては多重な酸味や旨味も感じられます。 また、テクスチャーに関してはまろやかながら軽快な喉越しが特徴的。
ラベル:実はラベルも注目ポイント。それぞれが宇宙や深海をイメージさせるような幻想的なデザインが描かれています。もし、お店などで提供する際はラベルもぜひ、お客様に見せてあげてください。
【宇宙深海酒ラインナップ】
現在までに高知県内7蔵から宇宙深海酒が発売されています。ラインナップは以下に記載させていただきます。もし、気になる銘柄があれば是非チェックしてみてください。
・安芸虎 純米大吟醸 深海の宇宙(有光酒造場)
・司牡丹 純米吟醸酒 宇宙深海酵母の酒(司牡丹酒造)
・南酒造 純米吟醸 土佐宇宙深海酒 CEL19(南酒造)
・松翁 純米酒 深海酒 DEEP OCEAN TRAVELER(松翁酒造)
・美丈夫 純米吟醸 宇宙深海酒(美丈夫酒造)
・亀泉 純米大吟醸 原酒 宇宙深海酒 Le Grand Voyage(亀泉酒造)
・無手無冠 純米吟醸 宙海(無手無冠)
【まとめ】
今回は高知県から2021年に誕生した新しい日本酒「宇宙深海酒」についてご紹介しました。
高知県のお酒は淡麗辛口とされていますが、宇宙深海酒はスッキリとしたテイストはありながらも、奥深い旨味や柔らかな香りが楽しめるのも魅力!
加えて様々な料理に適応できるポテンシャルを持ち合わせていますので、ジャンル問わず様々なペアリングが提案できるのもポイントです
酒販店などを通じて入荷できる機会がありましたら、ぜひ宇宙と深海のロマンが詰まった高知県の日本酒を多くの人にシェアしてみてはいかがでしょう。
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
5日配信 バナナみたいな甘い香りと奥深い旨味が魅力的な宇宙深海酒「深海の宇宙-Shinkai no Sora」
今回は高知県安芸市の酒蔵「有光酒造場」より、土佐酒らしい軽快な後口に濃醇な果実のような甘い香りとマイルドな旨味が加わった宇宙深海酒「深海の宇宙-Shinkai no Sora」をご紹介します。
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【特徴】
まず最初に宇宙深海酒について軽く説明を。
高度40万メートルのISS内で培養された清酒酵母を、6,200メートルの深海に4ヶ月間沈め、生存確率3億分の1と言われる過酷な環境下を耐え抜き誕生した「宇宙深海酵母」で醸されたお酒を指します。
1:原材料
今回の紹介酒には高知県産酵母「AA-41」が使用されています。こちらの酵母はバナナやメロンのような香り成分を多く生産する特徴があります。
また、お米も宇宙を旅した種籾から増やした酒米として、高知県産の「吟の夢」が使われており、スッキリと爽やかな酸味とふくよかな旨味をお酒に与えてくれる特徴があります。
2:香味
香りはバナナのような甘い吟醸香が優しくふわっと感じられます。
テクスチャーはマイルド系で、後半にかけて柑橘系の酸味と苦味でスッとキレるやや濃醇辛口系の酒質に仕上がっています。
さらに細かなガス感もあり、少し甘めなスパークリング酒に近しい感じでもあります。
【温度帯】
酒蔵推奨は冷酒となります。
補足としてはぬる燗も意外とオススメでしたので、お客さまに対して提供する際はシチュエーションやペアリングとなる料理に合わせて、2パターンでの飲み方を提案してみてください。
冷酒(10〜15℃):バナナのような吟醸香と優しい味わいが第一印象として体感できます。その後スッと流れるので飲み心地◎。
ぬる燗(40℃):香りと共に旨味や甘味部分に対して力強い存在感が現れてきます。
【ペアリング】
やや濃醇辛口な酒質ですので、旨味と程よい脂がのった肉料理がペアリングとして好ましい感じです。
色々とある中から、今回は3月に旬を迎える食材を使ったペアリンググルメをご紹介します。
・牛肉と筍のオイスター炒め
春時期が食べ頃な筍をたっぷりと使った一品。
オイスターソースとニンニクが効いた濃厚な味わいと紹介酒のマイルドな旨味がバランス良く、口の中に残る余分な油分だけをスッと流してくれます。
他にも上質な脂をまとった刺身や焼き魚、強い旨味とコクがある酢豚や天ぷらなども好相性なので、ぜひお試しあれ。
【まとめ】
今回は宇宙深海酒「深海の宇宙-Shinkai no Sora」の魅力やペアリングについてご紹介しました。
高知県の日本酒といえば淡麗辛口のイメージが強いかと思いますが、今回の紹介酒は全体的に丸みがあり、舌に馴染むような甘味と旨味が強み!
ぜひ各店舗様で自由にブランディングされながら、宇宙深海酒の魅力を伝えてあげてください。
【日本酒情報】
・日本酒名:深海の宇宙-Shinkai no Sora
・酒蔵:有光酒造場(高知県)
・種類:純米大吟醸
・アルコール度:15度
・精米歩合:50%
・日本酒度:+4
・販売価格:税込2,750円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
2025年2月 |
26日配信 今週おすすめの1本は、「笑四季 貴醸酒 モンスーン 山田錦」です。
こちらの笑四季酒造は滋賀県で1892年創業。
地酒であることにこだわり、全ての商品を純米かつ完全な手作りで醸されている。
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今回はそんな酒蔵から、貴醸酒をご紹介する。
<テイスティングコメント>
外観:ほんのわずかに濁っている。
香り:ナツメヤシ、スモーク香、ツツジ、メロンのような多彩な香りを強く感じる。
味わい:とろみのある口当たりで、ツツジやハチミツのような甘さとパイナップルのような酸味を感じる。
凝縮感があり、濃厚な味わいだが、上品で余韻も長い。
個性的な味わい。
醇酒(コクのあるタイプ)に該当。
提供温度は10℃前後の花冷えが適している。
<ペアリングについて>
しっかりとした味わいの為、酒盗やイカの塩辛などのアテと良く合う。
また、マスタードと相性が良い。
味わいにコクがある分、オリーブなどの特定の食材と合わせると苦味が強調されてしまう場合があるので注意する。
<具体的なペアリング>
・生ハムとはっさくのサラダ~マスタードドレッシング~
…柑橘のはっさくを使用したサラダとのペアリング。
ドレッシングは粒マスタード、オリーブオイル、ホワイトバルサミコ酢、砂糖、塩、胡椒を混ぜ合わせる。
サニーレタス、下茹でしたアスパラガス、皮をむいたはっさく、生ハムを器に盛り、ドレッシングをかけて完成。
柑橘の酸味と日本酒が同調し、爽やかで香り豊かなペアリング。
・イチゴのカプレーゼ
…イチゴは酸味と甘みのバランスが良いものがおすすめ。
イチゴを4等分にし、塩を振り、少し時間をおいて離水させる。
水分が出てきたら、オリーブオイルと合わせる。
器にブラッターチーズと和えたイチゴを盛り、バジルも添える。
仕上げにオリーブオイルと胡椒をかけて完成。
料理が引き立つ、華やかなペアリング。
・山菜の天ぷら
…食材はタケノコ、フキノトウ、タラの芽がおすすめ。
また、天つゆではなく塩をつけて食べると相性が良い。
短い期間しか出回ることがない旬の山菜の独特な香りと味わいがこの日本酒と相性が良く、特別感のあるペアリング。
笑四季のモンスーンは他にも様々な酒米品種で醸され、シリーズとなっているのでそちらについても是非調べてみていただきたい。
<商品説明>
商品名:笑四季 貴醸酒 モンスーン 山田錦
製造者:笑四季酒造株式会社(滋賀)
分類:生もと貴醸酒
原材料名:米、米こうじ、清酒
原料米:滋賀県産山田錦
精米歩合:50%
アルコール度数:17度
参考価格:720㎖ 2,750円(税込)
料理人/唎酒師ライター 内藤紫
19日配信 今回ご紹介するペアリング食材は、菜の花。
菜の花は早春に旬を迎えるアブラナ科の植物で菜種油や鑑賞用など、用途別でそれぞれ品種が存在する。
食用の菜の花は免疫力を高めるカロテンやビタミンc、食物繊維などの栄養価が豊富だが一度に食べ過ぎると腹痛を起こしやすいので注意が必要。
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そんな菜の花を今回は次のような調理方法とペアリングでご紹介する。
・ハマグリと菜の花のお吸い物 × 天明 純米吟醸 本生(福島)
…3月3日の上巳の節句(桃の節句)でも、良縁を招くとされ食するハマグリ。
菜の花との相性も良く、季節を感じる一品。
作り方はシンプルで、ハマグリを煮切り酒と昆布出汁と一緒に火にかけ、 ハマグリがひらいたら下茹でした菜の花と合わせて塩、薄口醤油で味を調え完成。
あわせる日本酒は福島県の「天明 純米吟醸 本生」。通称「みどりの天明」。
香り:メロン、リンゴ、生米のような香りが優しく広がる。
味わい:口当たりはさらりとしており、米の旨みを感じつつ、甘味と酸味が広がる。
バランスのとれた味わい。
薫酒(香りの高いタイプ)に該当。
こちらの曙酒造は全ての商品が特約店限定商品。
菜の花のほろ苦さとこの日本酒の香りがとても相性の良いペアリング。
5℃前後の雪冷えで合わせてほしい。
・タケノコと菜の花の混ぜご飯 × 月の桂 純米吟醸酒(京都)
…下茹でしたタケノコと菜の花を太白胡麻油と塩で炒める。
合わせ出汁で炊いたご飯に炒めた具材を混ぜ合わせ、いりごま、塩、薄口醬油で味を調えて完成。
あわせる日本酒は京都府の「月の桂 純米吟醸酒」。
香り:マスカットや青りんご、イチゴのようなフルーツの香りと炊いた米のような香り。
味わい:口当たりは滑らかで、上品な味わい。
爽酒(軽快でなめらかなタイプ)に該当。
京都で1675年から続く歴史ある酒蔵の定番商品。
爽やかで、春の訪れを感じるペアリング。
10℃前後の花冷えで、木製のおちょこで合わせてほしい。
・ホタルイカと菜の花のアンチョビ和え × 出羽桜 三年熟成大古酒 枯山水(山形)
…アンチョビペーストとリンゴ酢、上白糖、塩、オリーブオイルを混ぜ合わせておく。
下処理したホタルイカと下茹でした菜の花を先ほどのアンチョビソースと合わせ、味を調えて完成。
あわせる日本酒は山形県の「出羽桜 三年熟成大古酒 枯山水」。
外観:やや黄色がかっている。
香り:アーモンドやドライフルーツのような香りと玄米のような香りが感じられる。
味わい:口当たりはまろやかで複雑でありながら、包み込むような優しい味わい。
熟酒(熟成タイプ)に該当。
「お燗で美味しい日本酒」を目指し醸されたお酒。
アンチョビとホタルイカのコクのある味わいがより引き立つペアリング。
40℃前後のぬる燗で合わせてほしい。
春の訪れを感じる食材、菜の花。
他にもさまざまなペアリングにチャレンジしてみてほしい。
<ご紹介した日本酒の商品情報>
・天明 純米吟醸 本生
製造者:曙酒造合資会社(福島)
分類:純米吟醸酒
原材料名:米、米こうじ
原料米:山田錦
精米歩合:麹米50% 掛米55%
アルコール度数:16度
日本酒度:+2.0
酸度:1,8
参考価格:1800㎖ 3,604円(税込)
720㎖ 1,854円(税込)
・月の桂 純米吟醸酒
製造者:株式会社増田徳兵衛商店(京都)
分類:純米吟醸酒
原材料名:米、米こうじ
精米歩合:55%
アルコール度数:16度
参考価格:1800㎖ 3,520円(税込)
720㎖ 1,760円(税込)
・出羽桜 三年熟成大古酒 枯山水
製造者:出羽桜酒造株式会社(山形)
分類:特別本醸造
原材料名:米、米こうじ、醸造アルコール
精米歩合:55%
アルコール度数:15度
参考価格:1800㎖ 3,630円(税込)
720㎖ 1,815円(税込)
料理人/唎酒師ライター 内藤紫
12日配信 注目度が高まる高知県の郷土酒「土佐酒」
高知県で造られている日本酒は別称「土佐酒」と呼ばれています。
土佐酒を醸造する酒蔵は東西各所に点々とあり、西は四万十市にある「藤娘酒造」、東には田野町を拠点に代表銘柄「美丈夫」を醸造されている「濱川商店」と現在19蔵があります。
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また、高知県の日本酒造りは高い評価を得ており、ハワイで昨年10月頃に開催された「全米日本酒鑑評会」では、土佐酒が上位の金賞受賞数と受賞率で全国一位となりました。
そこで今回は土佐酒に関する特徴や文化、土佐酒を楽しむお座敷遊びなど、土佐酒の魅力について解説していきます。
【土佐酒の特徴】
土佐酒は全国でも随一の辛口テイストで酸味がしっかりあり、飲み応え十分。雑味が少なく綺麗な後味も魅力です。
酒米や酵母といった原材料に、高知県産が豊富なのも特徴のひとつなので詳しく解説していきます。
・酒米:高知県独自開発として今までに土佐錦・吟の夢・風鳴子が誕生しています。
・酵母:高知県産酵母は大きく2種類の性質があります。
1、バナナ系(A-14、AA-41、AC-17)
主に酢酸イソアミルを生産する酵母であり、バナナやメロンのような濃醇な甘さのある香りをお酒に付与してくれます。
2、リンゴ系(CEL-19、CEL-24、CEL-11)
主にカプロン酸エチルを生産する酵母であり、リンゴやパイナップルといった甘酸っぱい香りを付与してくれます。冷やして飲むことで爽やかな酸味も体感でき、先駆けとなったのが「亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24」です。
【土佐(高知県)の酒文化について】
・食文化との繋がりv 鰹をはじめ、高知県産の食材を美味しく引き立てるために、淡麗辛口の土佐酒が誕生としたと言われており、豊かな食文化から高知県民の多くが食中酒として重宝していることもまた事実。そこで高知県の食文化について解説していきます。
高知県は四国南部に位置し、豊かな自然に恵まれた土地柄から、海・山の幸と両方を活かした独自の食文化が発展してきました。
海の幸:代表的なのは鰹のタタキです。藁焼きで表面をこんがりと炙り、中はレアで仕上げ、ニンニクやミョウガ、ネギといった薬味をたっぷりとのせて食べられています。
ほかには脂がのった清水サバから、どろめや酒盗といった珍味も有名です。
山の幸:四万十川や安田川で獲れる鮎を使った塩焼きや、四方竹やぜんまいといった山菜を活かした炒め物や寿司などが挙げられます。
・お座敷遊びと土佐酒
高知県には、宴席で行われる伝統的なお座敷遊びが数多くあります。
これは土佐酒との関わりも深く、シチュエーションに合わせたお座敷遊びをしながら、お酒を酌み交わし郷土料理を味わうという楽しみがあります。
代表的なお座敷遊びをいくつか解説しますので、ぜひ体験してみてください!
1:可杯(べくはい)
可杯とは杯の台座部が尖って置けない杯や、底に穴が開いており指で塞がないとこぼれてしまう杯など、下に置くことができない杯のことです。
この遊びでは「三面杯」と呼ばれるものを使い、お酒の入る量が異なり、少量しか入らず置くことができる杯があれば、大容量で飲み終わるまで置けない杯があり、駒を回して止まった絵柄の杯で土佐酒を楽しむという遊びです。
2:菊の花
お盆に人数分の盃を伏せて置き、一人ずつその盃を取っていき、菊の花が入っている盃を開けた人は、それまでに空いている盃分、土佐酒を飲み楽しむという遊びです。
コチラは人数が多いほど盛り上がります
【土佐酒の魅力発信について】
高知県酒造組合を主体に、高知県は様々な形で土佐酒の魅力を発信し続けています。
・宇宙深海酒
2005年に開発を始め、まずは宇宙空間で10日間の培養に成功し宇宙酵母が誕生。その後、2021年に水深6,225mの深海に沈め、600気圧もの水圧に4ヶ月間耐えて培養に成功した酵母で造られたのが宇宙深海酒です。
2023年度に宇宙深海酵母を使った日本酒が初登場し、現在では11酒蔵から約15種類の宇宙酒・宇宙深海酒・深海酒がリリースされています。
香味特性としては、爽やかな香りがあり通常の土佐酒よりフルーティーな味わい。加えて多重な酸味や旨味が感じられます。
・土佐酒アドバイザー
高知県酒造組合が主体となり、土佐酒の文化や日本酒に関する知識を学び、土佐酒の魅力を多方面に発信する有識者を輩出する「土佐酒アドバイザー」という資格があります。
こちらは高知県内でも有名な資格として知られ、昨年21期生が卒業を迎えました。
【土佐酒の今後について】
今回は高知県の郷土酒「土佐酒」についてご紹介しました。
全体的に口あたり軽快で爽やかな酸感があり、サラッと流れる淡麗辛口テイストなので、魚や肉料理などジャンル問わずに合う万能的な食中酒といえます。
そして昨年には土佐酒が国内外16のコンテストで103個のメダルを獲得。合わせて日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことが後押しとなり、日本酒はもとより土佐酒も今以上に注目されることでしょう。
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
5日配信 「今週の注目の一本」爽やかな香味と柔らかい甘さが心地よい愛媛県の地酒「特別純米酒 叶川」
愛媛県では現在35蔵が日本酒造りに励まれています。
今回ご紹介するのは愛媛県にて100年以上の歴史を誇り、全体的に上質な旨味と雑味の無い綺麗なテクスチャーが楽しめる日本酒を造られている「養老酒造」より、淡麗甘口タイプの「特別純米酒 叶川」をご紹介していきます。
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【特徴】
1.原材料
酒米に松山三井、酵母はEK-1と共に愛媛県産の原材料を用いて造られています。
2.叶川の由来
銘柄名である「叶川」の由来について簡潔に記載しておきますので、ぜひ提供時に一言添えてみてください。
「養老酒造の地元である大洲市肱川町には『鹿野川(かのがわ)』が流れています。そして杜氏や蔵人の『飲む人の願いが叶いますように』という想いを込めて『叶川』と名付けられたそうです。」
3.香味
全体的に上質な旨味と雑味の無い綺麗な口あたりが特徴にあり、まるで白ワインのようなテイストです。
香りはグラスに注いだ後の立ち香や含み香ともに、フレッシュなリンゴや桃を彷彿させる爽やかな果実感が感じられます。
味わいに関しては、スッと喉を流れるようなドライ感ありながら、日本酒度は−6に設定されているので、口の中でジワーっと広がる甘味や旨味の奥深さも体感できます。
【温度と酒器】
・温度:涼冷え〜常温(15〜20℃)
・酒器:口が細まったワイングラスであれば、爽やかな果実感とスッキリとしたテクスチャーを十分に体感することができます。
【ペアリング】
2月はカリフラワーや菜の花、鰆などが美味しい季節でもあります。そこで旬食材を活かしたペアリングレシピをご紹介します。
・カリフラワーとシーフードのクリームグラタン
柔らかい食感に仕上げたカリフラワーとホワイトソースのまろやかなコクが相まった一品。エビやイカなどのプリッとした食感をプラスすることで、より美味しさが引き立ちます。
冷やした「特別純米酒 叶川」と合わせれば、クリーミーさと淡麗な甘さが相乗しつつ、後味は綺麗に流してくれるため、好相性なペアリングが期待できます。
・鰆の酒蒸し 香味野菜ポン酢添え
酒蒸しで身がふっくらとした鰆に、刻んだ生姜やネギを和えたポン酢は好相性。
「特別純米酒 叶川」が淡麗甘口テイストなので、料理の魅力を軽減することは無くペアリング的にも◎
ほかには、オイル系のパスタや魚のムニエル、桃とモッツァレラチーズのカプレーゼなども好相性ですよ。
【まとめ】
今回は愛媛県の養老酒造から発売されている「特別純米酒 叶川」をご紹介しました。
清流をイメージした端麗なラベルデザインと同調するように、綺麗な飲み心地でやや甘口&後味淡麗なので、日本酒への馴染みが薄い人でも飲みやすい一本です。
ペアリングもほぼジャンル問わず合わせやすいので、ぜひ季節食材を使った料理と共にご提案してみてください。
【日本酒情報】
・日本酒名:特別純米酒 叶川
・酒蔵:養老酒造
・種類:特別純米酒
・精米歩合:60%
・アルコール度:15度
・日本酒度:-6
・販売価格:1,760円(720ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
2025年1月 |
29日配信 Z世代酒匠がおすすめする「今週の注目の一本」は飛囀 鵆 CHIDORI/飛良泉本舗(秋田)です。
創業500年を超える東北最古の酒蔵の、新世代蔵元が手がける挑戦酒シリーズ「飛囀」。
山廃×貴醸酒×No.77酵母という珍しいスペックを掛け合わせた一本で、普段とは一味違う味わいを求める甘口好きにおすすめです。
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商品名:飛囀 鵆 CHIDORI
酒蔵名:飛良泉本舗(秋田県にかほ市) 精米歩合:50%
原料米:秋田酒こまち
アルコール度数:13度
参考価格(税込):2200円(720ml)
その他:大量のリンゴ酸を出すきょうかい酵母No77を使用。
★飛囀シリーズ
500年以上の歴史を誇る老舗蔵元の27代目が始めた新シリーズ。
飛囀(ひてん)という名称には、幼い雛が大空を「飛」び、「囀」るようになるまで成長する姿を酒造りと重ね合わせて付けたそうです。
これまでに雛(ひな)や鵠(はくちょう)、鸐(やまどり)、鸙(ひばり)、䴏(つばめ)など鳥の名前がついた商品をリリースしています。
飛良泉の伝統である山廃酛での仕込みを大切にしながらも、酸に振り切った味わいや酵母違いで仕込む等、新世代の山廃像にも果敢に挑戦しています。
★香りと味わいの特徴
外観はごく淡い黄色。
リンゴやミカンをかじった時のような、凝縮された果汁を思わせる甘酸っぱさが口いっぱいに広がります。中間から後半にかけては次第にコクが増していき、山廃らしいしっかりとした骨格が感じられます。
-36と日本酒度で見れば極甘口なものの、刺激性が高い爽やかな酸味が特徴のリンゴ酸を多く生み出す酵母を使用しており酸度が3.2と平均の倍以上あるため、甘ったるさは全くなく爽やかな甘味と酸味が高濃度で調和した味わいに仕上がっています。
★おすすめの楽しみ方
<温度帯>
冷やでは上述のようにリンゴ酸由来の爽やかな甘酸っぱさが感じられ、若々しくフレッシュな印象。一方、燗にすると酸味にまろやかさと膨らみが感じられ、包み込まれるようなおおらかな味わいに変化します。
<酒器>
幅広い温度帯で楽しめる味わいのため、特に適した形や材質があるというよりは、グラスや猪口、ぐい呑み、平盃など様々な酒器で提供が可能です。
<料理>
他の日本酒ではなかなか見られない、凝縮された甘酸っぱさという特徴を最大限引き出すには、おかずに合わせる食中酒としてよりはチョコレートやドライフルーツを使ったケーキ等と一緒にデザートとしての提供がおすすめ。
ただし、燗にした場合は酸味がまろやかになり、落ち着いた深みのある味わいになるため、例えば豚の角煮や酢豚といった濃厚な味わいのおかずと合わせやすいでしょう。
Z世代酒匠ライター kanane_sake

こちらの菊姫合資会社は石川県で創業以来、米の旨みを生かした清酒本来の味を追求し日本酒を醸している。
今回はそんな酒蔵から、長期熟成にも耐える最高級米「特A地区 山田錦」を使用した熟成酒をご紹介する。
<テイスティングコメント>
外観:綺麗な琥珀色。
香り:干しブドウやシイタケ、ゴボウ、ウーロン茶、玄米などのような多彩な香りを強く感じる。
味わい:まろやかな口当たりで、干しブドウやオークなど複雑な香りを楽しめる。
凝縮感があり、濃厚な味わいだが、上品。
余韻にはカラメルやカカオのような心地よい苦味を感じる。
濃醇旨口。
熟酒(熟成タイプ)に該当。
提供温度は10℃前後の花冷えまたは50℃前後の熱燗が適している。
<ペアリングについて>
複雑な味わいの為、煮込み料理と相性が良い。
また、日本酒の香ばしさが温かいスイーツと良く合う。
バランスが良い為、比較的様々な料理と合わせやすい。
<具体的なペアリング>
・寒鯖のしめさば
…冬に旬を迎える鯖とのペアリング。
鮮度の良い鯖を三枚おろしにし、骨を取り除く。塩を両面にまんべんなく振り、冷蔵庫で1時間おく。
全体を水でさっと洗い、水気をふき取り、米酢に15分漬け込み完成。
日本酒の複雑さと鯖の甘みが引き立つペアリング。
10℃前後の花冷えで合わせてほしい。
・牛すじ煮込み
…牛すじは一度水で下茹でを行う。
その後、酒、昆布だしと共に2時間ほど弱火で炊く。
一口大に切った大根と人参も加えたら上白糖、煮切みりん、濃口醤油で味を整える。
牛すじからあふれ出す旨みと日本酒のコクが同調し、後引く味わい。
10℃前後の花冷えで合わせてほしい。
・フォンダンショコラ
…この日本酒にはカカオ65%のややビターな味わいがおすすめ。
中のガナッシュと外側の生地を別々で作るのが一般的だが、今回は簡単に作ることが出来るレシピでペアリング。 無塩バターとチョコレートを湯煎にかけて溶かし、卵黄2個、メレンゲにした卵白1個分、加熱した生クリーム、グラニュー糖、薄力粉を入れ合わせる。最後にコアントローを数滴入れ、型に流し180℃の余熱したオーブンで8分ほど様子を見ながら焼けば完成。
チョコレートのややビターで濃厚なコクとコアントローのほのかな香りが日本酒と合わせるとより引き立つ。
バレンタインの日にもぴったりな一品。
50℃前後の熱燗で合わせてほしい。
8年かけてじっくりねかせた、洗練された複雑な味わいの日本酒。
是非、旬の食材とのペアリングも試していただきたい。
<商品説明>
商品名:菊姫 純米速醸仕込 28BY
製造者:菊姫合資会社(石川)
原材料名:米、米こうじ
原料米:兵庫県三木市吉川町(特A地区)産山田錦100%
精米歩合:65%
アルコール度数:15度
参考価格:720㎖ 1,925円(税込)
1800㎖ 3,850円(税込)
料理人/唎酒師ライター 内藤紫

タラの旬は12月~3月ごろの寒い時期で、スケトウダラやコマイなど多くの種類がありますが今回はマダラ(真鱈)をご紹介します。
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タラは身の部分がややピンク色がかっているものが鮮度の良いものです。
さらに、白子は白く透明感のあるものが新鮮なもの。
また、独特の生臭い香りがある為、湯引きなどの下処理をしっかりと行ことをおすすめします。
タラの栄養価は他の魚と比べても、脂質が少なくタンパク質の多い食材で、貧血予防に効果的なビタミン12も豊富に含まれています。
そんなタラを今回は次のような調理方法とペアリングでご紹介します。
・タラと白子の茶わん蒸し × 伯楽星 純米大吟醸(宮城)
…茶わん蒸しの地は溶き卵、合わせ出汁、塩、薄口醤油を合わせ、裏ごしをします。
タラの切り身と白子は一口大に切り、塩を振ったら先に蒸して火を通します。
火が通ったら裏ごしした茶わん蒸しの地を入れ、中火で火を入れ固めます。
仕上げに味付けした合わせ出汁の餡を上にかけ、三つ葉を乗せて完成です。
あわせる日本酒は宮城県の「伯楽星 純米大吟醸」。
マスカットのような爽やかな香りが穏やかに感じ、スッキリとキレのある後味が心地よい味わいです。
究極の食中酒を目指し、あえて香りを抑えるように醸された日本酒で国際線のファーストクラスでも提供されています。
伯楽星の香りとキレが、タラのサッパリとした味わいと白子のコクに良く合います。
切子のおちょこで5℃前後の雪冷えで合わせてほしい、上品なペアリングです。
・タラの竜田揚げ~タルタルソース添え~ × 獺祭 純米大吟醸 磨き45(山口)
…タラは一口大に切り軽く塩を振り水分をふき取ります。
酒、濃口醤油、上白糖、みりんを合わせた地に15分ほど漬け込み、水分をふき取り片栗粉をまぶして揚げます。
あわせる日本酒は山口の「獺祭 純米大吟醸 磨き45」。
りんごの蜜やバナナのようなフルーツの華やかな香りが爽快な味わいです。
旭酒造のスタンダード酒で獺祭の果実の味わいがタラの旨みを引き出し、タルタルソースが良いアクセントとなるペアリングです。
10℃前後の花冷えで合わせてみて下さい。
・タラチゲ鍋 × 飛露喜 特別純米(福島)
…具材には殻付きのアサリを使用し、魚介の味わいを強く出すのがポイント。
にんにくとおろししょうがをサラダ油で炒め、ブイヨンとコチュジャンを入れます。
具材はタラ、殻付きアサリ、キムチ、白菜、豆腐、その他好きなものを入れ、
しっかりと煮込めば完成です。
あわせる日本酒は福島県の「飛露喜 特別純米」。
バナナのような香りが穏やかに広がり、米の旨みをスッキリと感じます。
人気が高く、入手困難なプレミア酒となった飛露喜の定番酒。
チゲ鍋の魚介のコクがより引き立つペアリングとなっています。
10℃前後の涼冷えで合わせてみて下さい。
種類が豊富で身近な食材である、タラ。
他にもさまざまなタラの調理とペアリングにチャレンジしてみて下さい。
<ご紹介した日本酒の商品情報>
・伯楽星 純米大吟醸
製造者:新澤醸造店(宮城)
分類:純米大吟醸酒
原材料名:米、米こうじ
精米歩合:40%
アルコール度数:15度
酸度:1,6度
日本酒度:+5
アミノ酸:1,1
参考価格:1800㎖ 5,390円(税込)
720㎖ 2,750円(税込)
・獺祭 純米大吟醸 磨き45
製造者:旭酒造株式会社(山口)
分類:純米大吟醸酒
原材料名:米、米こうじ
使用米:山田錦
精米歩合:45%
アルコール度数:15度
参考価格:1800㎖ 4,367円(税込)
720㎖ 2,183円(税込)
180㎖ 545円(税込)
・飛露喜 特別純米
製造者:株式会社廣木酒造本店(福島)
分類:特別純米酒
精米歩合:55%
アルコール度数:16度
参考価格:1800㎖ 3,190円(税込)
料理人/唎酒師ライター 内藤紫
8日配信 日本酒ビギナーにオススメな土佐酒「亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24」
今回ご紹介するのは、高知県の酒蔵「亀泉酒造」にて醸造されている超甘口な純米吟醸生原酒です。
淡麗辛口文化が強い高知県の日本酒(通称:土佐酒)ですが、紹介する日本酒は「フルーティーさがあり、白ワインに近しい感じで飲みやすい」と根強い人気があります。
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【特徴】 まずは気になる香りや味について。
香りは青リンゴやパイナップルを彷彿させる華やかな果実感が堪能でき、飲んだ瞬間はジューシーな甘酸っぱさが体感できます。
そこからサラッとキレる爽やかな酸感のおかげで、口の中に甘さが残りすぎないので飲み心地も快適!
また、アルコール度数14度の低アルということも含めて、毎年冬の発売時には注文が殺到するほどの人気銘柄です。
ここまで注目を集めるほど上質な香味に仕上がっている理由として、重要なポイントが2つあります。
1.酵母
高知県工業技術センターで開発された高知県産酵母「CEL-24」は、華やかな香りと青リンゴのような甘酸っぱさをお酒にもたらしてくれる特性があります。結果的に今回の紹介酒は高知県の日本酒では珍しい超甘口タイプに仕上がっています。
2.日本酒度
基本的には醸造された際、銘柄ごとで数値は決まっているものだと思います。
しかし、「亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24」は仕込みごとで日本酒度が変化するという特徴があります。度合いはー8~ー16のなかで変化しているとのこと。
この2つの要素を提供時に説明することで、飲み手の感じ方もまた変わってくるはずです。
【酒器】
ワイングラスが推奨ですが、なかでもオススメは「キャンティグラス」です。縦長で口をつける部分がすぼまっているグラスのことを指し、通常の酒器よりも口あたりや香り高さがより強く体感することができます。
【ペアリング】
1月になれば水菜やキャベツ、ぶりなどの食材が旬を迎えます。季節的に寒くなる日が続きますので、体が温まる料理からオススメのペアリングをご紹介します。
ブリしゃぶ:昆布だしが効いたお鍋にくぐらせたブリの優しい甘みと紹介酒の爽やかな甘みが相乗反応を生むので相性良好。また、食べ終わりの余分な脂をサラッと流してくれるのも◎
・カニ料理:しゃぶしゃぶや焼きで調理したカニの良い香りと同調し、凝縮された旨味や甘味を遮らない食中酒として活きてきます。
ほかにもバター焼きやグラタンなどのアレンジメニューも豊富ですので、色々と試してみてください。
【まとめ】
今回は高知県の酒蔵「亀泉酒造」より、超甘口な純米吟醸酒より『亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24』をご紹介しました。
爽やかな酸味とほのかな甘味の絶妙なバランス感にフレッシュな果実系の香りが楽しめる土佐酒に仕上がっているので、女性や日本酒ビギナーでも十分に飲み楽しむことができます。
日本酒の注文で悩まれているお客様には是非、食前や食中酒などで提案してみてください。
【日本酒情報】
日本酒名:亀泉 純米吟醸生原酒CEL-24
酒蔵:亀泉酒造
種類:純米吟醸酒
アルコール度:14度
日本酒度:-11
精米歩合: 50%
価格:税込1,876円(720ml)、3,751円(1800ml)
高知県在住唎酒師 日本酒フォトライター 谷口 廉
新潟の豊かな自然に囲まれた酒蔵が、森で採れた和のハーブ・クロモジを使って醸したクラフトサケ。爽やかさと重厚感を併せ持った特徴的な香りとビターな味わいは、和食だけでなくイタリアンやフレンチ、エスニック料理などジャンルを超えたペアリングにおすすめです。
▼開く★商品紹介
商品名:翔空 森のSAKE〜クロモジ澄み酒〜
酒蔵名:LAGOON BREWERY(新潟県新潟市)
精米歩合:70%
原材料:米(新潟県産五百万石100%使用)、米麹、クロモジ
アルコール度数:16度
参考価格(税込):2640円(720ml)
その他:清酒をベースに、副原料としてクロモジを使用。酒税法上の分類では「清酒」ではなく「その他醸造酒」に分類される、いわゆる「クラフトサケ」と呼ばれるジャンルです。
★クロモジとは
クロモジは日本原産のクスノキ科の低木で、落ち着いたウッド調の香りの中に甘さのあるフローラルな香りも含んだ芳香が特徴です。
新潟県・栃尾地区の森で採取したクロモジの枝を細かく裁断し、米と一緒に醪の中で発酵させることにより、クロモジ独特の香りを纏わせたお酒になっています。
酒蔵の方針として、自然栽培や有機栽培など環境にやさしい方法で作られた米を積極的に使用する他、輸送による環境負荷を減らすために半径20km圏内で取れた米のみを原料米とすることを目指しているそうです。このような蔵独自のこだわりを提供の際にお伝えすることでお酒の背景まで感じながらお楽しみいただけるでしょう。
★香りと味わいの特徴
ロゼワインのような、透き通った淡いピンク色の外観はクロモジの特性によるもの。
爽やかなハーブの香りが漂い、口に含むと新緑のような瑞々しさはありながらも派手になりすぎない、落ち着いたクロモジの香りと苦味が鼻に抜けていきます。
甘味はほとんど感じず、ハーブの爽やかさや重厚感を演出することに振り切ったビターな味わい。長すぎず短すぎない絶妙な余韻が舌に残る、最初から最後まで一貫してクロモジの存在感を全面に出した個性的なお酒です。
★おすすめの楽しみ方
<温度帯>
冷やした状態では爽やかさやスパイシーさなどハーブ感を存分に楽しむことができるとともに、締まったクリアな苦味が感じられます。
少し温度が上がってくるとふくらみのある米の旨味が感じやすくなり、より重層的な味わいへと変化します。
<酒器>
淡いピンク色の外観を楽しむには、透明のグラスや内側が白い酒器が向いています。温度変化による味わいの違いを楽しめるよう、少し大きめの酒器での提供がおすすめです。
<料理>
個性的な香りはカプレーゼやカルパッチョといったハーブを使った前菜や、鶏もも肉や白身魚の香草焼きと相性抜群です。パッタイやガパオライス、フォーなどのエスニック料理とも香りや味わいが同調し好相性でしょう。
Z世代酒匠ライター kanane_sake