40蔵の日本酒を揃える酒処の店主、300名以上の日本酒ナビゲーターを輩出

佐藤 宏幸さん
1970 年宮城県生まれ。北海道大学卒業後、飲食店、流通業界、酒販店等に勤務。2013 年、仙台市・国分町に「日本酒処参壱丸撰」を開業。’03 年に唎酒師と焼酎唎酒師、’05 年に酒匠、’11 年に日本酒学講師、’15 年にFBO公認講師を取得。
日本酒処 参壱丸撰
宮城県仙台市青葉区国分町2-7-7 あんでるせんビル2F
http://www.bar3103.com


仙台の国分町に日本酒バー「参壱丸撰」を構えて4年になる、仙台出身の佐藤宏幸氏。カウンター席主体で、全国の蔵元の中から約40蔵各1銘柄を常備し、お通しとして6種の料理を1,500円で提供。豊富な小鉢に、締めの釜飯も季節によりさまざまなバリエーションがあり、これらすべてを佐藤氏一人で切り盛りしているというから驚きです。

仙台市営地下鉄南北線の勾当台公園駅または広瀬通駅より徒歩6 分。日休。カウンター9 席とテーブル8 席
「ここは東北一の歓楽街と称されますが、昔ほどの盛況はありません。そのため、私は常に危機感を持ってやっています」
学生時代から日本酒の美味しさに目覚め、飲食店や流通業、酒販店等に勤務した後に独立。唎酒師、酒匠、日本酒学講師の資格はいずれもサラリーマン時代に取得しています。

「独学であいまいな部分を体系的に学ぶチャンスであると思ったのと、例えば居酒屋へ行って日本酒談義で盛り上がった時など、そうした肩書きがあれば、それなりの知識を持っていることがアピールしやすく、蔵元を訪問しても、ただのひやかしではないということが伝わると思いました」
店を開いて半年経った頃から、8名までの講座を月1回開催し、のべ300名以上に日本酒ナビゲーターを授与してきました。

日本酒に関するブログを開設しており、講座はそこで告知。店で定期開催している安定感からか、常に応募者が絶えない。
「最初は営業につなげるのが目的でしたが、外食店で提供された酒を飲むのが好きな人と、講座で知識を深めたい人の層は違うとわかりました。講座に来る方は、家庭で日本酒と料理を楽しみたい主婦などが比較的多く、年齢層は幅広いです。辛口という表現はいかに個人差があるかということや、4タイプにするとわかりやすい、といったところが特に反応が大きいですね」

「日本酒の価値を高めていくには、その背景にあるストーリーをきちんと伝える必要があるという、使命感を持っています。


“日本酒と女性”を切り口にコミュニティを主宰。地域間交流を目指す


村山和恵さん
1974年秋田県生まれ、新潟県育ち。新潟大学大学院卒業後、OL生活を経て新潟青稜大学の助教に就く。専攻はホスピタリティ論、観光マーケティング。
2006 年唎酒師、’11 年日本酒学講師取得。女性の日本酒コミュニティ「にいがた美醸」主宰。新潟日報カルチャースクール、JEUGIA カルチャーセンター、フクダハウジング、丸の内朝大学等で講師を務める。酒サムライ、にいがた観光特使。
https://ameblo.jp/love-ricewine


「学生の頃は居酒屋でサワーやビールなどを飲んでいましたが、一般企業に就職し、仕事の飲み会や接待で年配の方たちと酌み交わすようになると、せっかく新潟に暮らしているのだから美味しい日本酒を飲んだらどうか、と言われました。また、美味しい和食やお寿司の味も覚えるようになると、合わせるお酒はやはり日本酒だと自分でも思うようになりました」

2001年、27歳の時に転職し、大学の助教に就任。ホスピタリティ論や観光マーケティングの教鞭をとるかたわら、日本酒をより詳しく知りたいと、’06年に唎酒師の資格を取得。それを足がかりに、’09年には女性のための日本酒コミュニティ「にいがた美醸(ビジョウ)」を主宰するようになります。

「私は一人でも居酒屋に行っていたのですが、同世代の女性が気兼ねなくカジュアルに日本酒を楽しめるムードは当時まだありませんでした。が、おじさんたちだけのものにしていてはもったいない、女性たちに知って欲しいと思ったのがきっかけです。最初は日本酒を楽しく飲むための小さなサークルのようなものでしたが、やがて県内の酒蔵訪問ツアーなどを開催するようになりました」


にいがた美醸5周年記念に、田植えから酒造りを体験した。
’18年は10周年なので、また行う予定。会員の大半は県内だが、埼玉や神奈川の人もいる。
セミナー依頼の声も増えるようになり、自分のスキルを高める必要性や、教える立場を証明するものが欲しいと感じ、’11年に日本酒学講師の資格を取得。仕事柄、人前で話すことには慣れていた村山さんですが、取得のための講座を受けることで、プレゼンテーション能力がより高められたと言います。

活動範囲は新潟に留まらない。写真群馬県藤岡市の「かんな秋のアート祭り」にてテイスティング体験の指導を担当。外国人のビギナーは、おちょこを一気飲みのショットグラスだと思っている人が少なくないため、差しつ差されつの文化だと伝えた。大阪の阪急うめだ本店でのイベントに遠征。


現在、にいがた美醸のメンバーは120名。冬場は月1回の頻度で酒蔵見学を行っており、また、酒をテーマにしたJRジョイフルトレイン「越乃Shu*Kura」のメニュー開発を担当するなど、知名度が上がっています。その他、村山さんは地元の複数のカルチャースクールで日本酒ナビゲーター、焼酎ナビゲーターを与える講師を務め、にいがた観光特使にも任命されています。
写真はJR 新潟のジョイフルトレイン「越乃Shu * Kura」で、春夏秋の往路・復路に提供されるおつまみのメニュー開発をにいがた美醸が担当。地域食材を用いている。

唎酒師112名、日本酒学講師10名
日本の伝統文化を消費者へ伝え続ける蔵元


沢の鶴株式会社の日本酒学講師陣
後列左より製造部の牧野秀樹氏、矢吹道行氏、マーケティング室の郷田琢磨氏、営業部の大川寿晴氏。前列左より製造部の森田貢史氏、森脇政博氏、松田昭範氏、今野浩之氏。他2名(輸出担当、資料館担当)の計10名が資格を持つ。
沢の鶴株式会社
兵庫県神戸市灘区新在家南町5-1-2
http://www.sawanotsuru.co.jp

灘五郷の西郷に属する蔵元の一つが沢の鶴株式会社。創業は享保2年(1717年)、米屋の副業として酒造りを始めたため、ロゴマークに米の字から取った「※」印を掲げたのだそうです。そのため、「米を生かし、米を吟味し、米にこだわる。」ことをモットーに歴史を築いてきました。

今回、お話をうかがったのは、マーケティング室の郷田琢磨氏。同県出身で、1987年に入社し、’95 年に唎酒師、2006年に日本酒学講師の資格を取得しています。


「当社では現在、従業員180名のうち112名が唎酒師で、少なくとも営業部の社員は資格を取ることが義務づけられています。更に年1回、社内規格における上級唎酒師の試験を行い、上位3~ 5名は、FBO公認講師、日本酒学講師の受講受験を会社負担で受けることができます。こうしたシステムにより、社員のスキルやモチベーションのアップにつながっています」

日本酒をより美味しく楽しんでいただくためのセミナーで、修了者には日本酒ナビゲーターを授与。ホームページやSNSで告知し、定員は50名。多い場合は抽選により決めている。

現在、日本酒学講師の資格を持つ人は10名。名刺に明記することで、名刺交換の際のコミュニケーションツールとして一役買う他、年2回本社にて日本酒ナビゲーター認定セミナーを開催し、講師は順番に担当しているそうです。

「以前は中高年層の受講者が比較的多かったですが、ここ数年は若い女性が増えています。また、県内の方だけでなく、大阪、京都、滋賀などから来られる方も。日本酒に興味を持つ人の層が広がっていると実感しますね。


同社は灘五郷の中で最も神戸港に近く、2017年は神戸開港150年ということもあり、海外からの大型客船の乗客が大勢「沢の鶴資料館」を来訪した。
日本酒の海外進出が盛んになってきた昨今、海外担当の社員も日本酒学講師の資格を取り、現地の販売代理店やレストランの従業員など流通に関わる人たちに正しい知識を伝えているとのことです。

 

TOP
CLOSE